15日、Web業界における著名なエキスパートが集結する豪華カンファレンス、Web Direction East 2010が開催された。
厳選されたエキスパート達から、Web制作・開発における最先端の情報を仕入れられるとあって、本イベントの社会的な価値は非常に高い。本記事では数ある注目セッションの中から、筆者が参加することのできたBruce Lawson氏の「HTML5の鉄人になろう」という記事を紹介したい。
HTML5は「ワット・ロン・クン」のようなもの!
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ブルース・ローソン氏 |
Bruce Lawson氏はOpera Software社のWeb標準エヴァンジェリスト。タロット占い師や映画のエキストラなど変わった経歴の持ち主で、ユーモラスな語り口が非常に魅力的な人物だ。
同氏によれば、HTML5とは「ワット・ロン・クン」のようなものだと言う。ワット・ロン・クンとは、1997年から建築が始まったタイの寺院で、白く輝く外見と、至る所に見られる奇抜なデザインが人気の観光名所だそうだ。
どこらへんがHTML5に通ずるのかと言うと、
- ワット・ロン・クンの建築家であるチャルームチャイ氏曰く、「これまでの建築物は行き詰まっていた」とのこと。これは以前のWeb標準において、HTMLやXHTMLが行き詰りを見せていたことに通ずる。
- 伝統とモダンを融合したセンス。これは、後方互換性を重視しつつ、時代にあった仕様を次々に取り込んで行くHTML5に通ずる(Lawson氏曰く、「HTML5は、『HTML4.01 + ギラギラ(したリッチな新機能)』だという)
- 同寺院は観光名所として既に名高いが、現在でも建築中の部分が多く残されている。これはHTML5において、仕様の大部分がまだ固まっていないにもかかわらず、既に利用可能な実装が存在するという状況に通ずる。
といったところである。なかなか絶妙なたとえだと、感心してしまった。
HTML5が「勝者」である理由
続いてLawson氏は、HTML5のメリットについて以下のように語った。
- 高い後方互換性と、移行の明確さ・・・XHTML2のように過去の実装との互換性を一切考慮しない仕様では、移行もままならない。その点HTML5は互換性を維持しつつ、Web制作者、そしてブラウザベンダにとっても、移行が容易であるように設計されている。
- エラー定義の明確さ・・・従来のHTMLとは異なり、HTML5ではマークアップにエラーが有った場合の挙動も明確に定義されている。そのためWeb制作者がエラーに気づきやすくなるだけではなく、どのブラウザでも同じDOMが構築されるよう、マークアップを行うことが出来るようになる。
- ユーザーがオーサリングエラーに晒される必要がない・・・XMLの問題点は、エラーが見つかったらそこでエラーを報告し、動作を停止してしまうことだ。こうした動作は、制作者にとっては良くても、ユーザに取っては問題となる。多少のエラーがあってもWebページが表示された方が、ユーザに取ってはありがたい。HTML5ではエラーのあるマークアップの処理方法も規定されているため、ユーザにとっての理想的な動作も実現が可能となる。
その他、オープンなプロセスを重視することや実用性の重視、「牛の通り道を舗装する」(既存の実装や慣例、慣習を基に仕様を抽出する)と言った、HTML5の仕様策定で気を配られていることについての言及があった。