フィンランドNokiaとSymbian FoundationがスマートフォンOS「Symbian」の戦略変更を発表した。Symbian Foundationは今後、ライセンス供与のみを行う団体となり、Symbian Foundationが行ってきたオープンソースのプラットフォームプロジェクトの運用はNokiaの下に入る。これにより、Symbianのロードマップはどうなるのか? 11月9日から2日間、オランダ・アムステルダムで開催した「Symbian Exchange & Exposition 2010」で、Symbian FoundationとNokiaの担当者がSymbianプラットフォームのロードマップについて説明した。

Hutton氏は冒頭でこれまでのSymbian Foundationの成果について触れた。「2010年2月にオープンソース化し、2010年5月に「Symbian ^2」端末が出荷となり、2010年6月にオープンソースの「Symbian ^3」が完成し、2010年9月にSymbian ^3搭載機が出荷開始となった。2010年第2四半期のSymbian端末出荷台数は2,700万台を記録した」

Jari Torkkel氏

NokiaのJari Torkkel氏はNokiaの計画として、「開発フレームワークの「Qt」とHTML 5サポートにフォーカスしていく」と述べた。具体的には、最新の「Symbian ^3」開発ブランチのアプリケーションとミドルウェアのレイヤ、次期版「Symbian ^4」のSMP(対称型マルチプロセッサ)やハードウェア抽象化インタフェースの「SHAI(Symbian Hardware Abstraction Interface)」、OSと一部のミドルウェアレイヤなどを組み合わせる。Qtからはモバイル向けのAPIパッケージ「Qt Mobility API」などが含まれることになる。

UI側では、Symbian向けのQt拡張フレームワークである「Orbit」、Qtの最新のUIフレームワーク「Qt Qucik」コンポーネントに変わることになる。これにより、OrbitおよびOrbitベースの「Direct UI」の開発は打ち切りとなる。

OS側での大きな変化は、これまでの固定されたバージョンアップから、機能強化を継続的に配信するモデルとなる点だ。開発側では、容易な開発と優れたUI開発として定評のあるQtにフォーカスすることで、「開発者はアプリケーション開発の作業を簡素化し、市場提供までの時間を短縮できる」とTorkkel氏。

Ian Hutton氏

Symbian Foundationのロードマップ担当トップのIan Hutton氏は、当面Symbian ^4として開発を進めていく機能として、ソーシャルモバイルフレームワーク、SHAI、ハードウェア側の進化を活用するマルチコア/SMP、最新のWebブラウザなどに触れた。SHAIでは、抽象化レベルをさらに進めデバイスの開発を容易にするという。新しいコードラインの構築、ツールの強化などもロードマップに挙げた。アプリケーション開発側では、「Qt 4.7」とQt Quick、Qt Mobility、HTML 5などが含まれる予定だ。

Hutton氏は、Nokiaに移行するまでの間、プラットフォームで3つの点にフォーカスして進めていくと述べた。「1つ目は開発者にとって素晴らしいプラットフォーム、2つ目はハードウェア要件が低く、柔軟性がありパワフルなモバイルOS、3つ目はUIレベルでイノベーションサイクルを加速」とHutton氏。Nokiaへの引継ぎは2011年3月末で完了するが、その後も、「Nokiaがそれを継続するだろう」と望みを託した。そして、「今後もSymbianはマス向けのスマートフォンとして発展していく」と述べた。

すでにEclipse Public Licenseなどのオープンソースライセンスの下で公開されたコードは、今後もかわらないという。Nokiaでは今後、「オープンなマナーで」(Torkkel氏)Symbianを提供していくというが、具体的なことはまだ決定していないという。