日本電気(NEC)は10月5日、製造業向けPLM((Product Lifecycle Management)ソフトウェア群の新版「Obbligato III」を発表した。
![]() |
NEC 製造・装置業ソリューション事業本部 事業本部長 平野文康氏 |
Obbligatoは、設計図面/仕様書/部品表などの製品技術情報を相互に関連付けて、製造プロセス全体を統合管理できるPLMソフトウェア群。NEC製PLMソリューションとして20年以上の歴史があり、今回は1998年以来の大規模バージョンアップとなる。
Obbligato IIIの最大の特徴は、クラウドサービス型の提供形態を用意している点。従来通りの自社構築/運用型に加えて、基本機能のみをクラウドサービスとして提供する「SaaS型クラウドサービス」や、各企業向けにカスタマイズしたものをNECの共通IT基盤サービス「RIACUBE」の上で実行する「個別対応型クラウドサービス」が選択肢として提供されており、アプリケーション(業務)ごとに異なる形式のものを選び、マッシュアップして使用することも可能になっている。
NEC 製造・装置業ソリューション事業本部 事業本部長の平野文康氏は、提供形態を増やした背景について、「日本の製造業の中には、海外に工場を持つ企業が増えてきているうえ、時勢に応じて工場を移転するようなケースもある。そうした新天地での事業の立ち上げをスムーズに進めてもらえるよう、クラウドサービス型の提供形態を用意した。ただし、大手企業の中には製造プロセス自体に工夫を施し、競争力の源泉としているところが少なくない。そういった企業がクラウドサービスを選択する場合においても、自社構築のケースと同様、アプリケーションに対して細かい要望を反映できるように個別対応型クラウドサービスをメニューに組み込んでいる」と説明した。
さらに、SaaS型/個別対応型の選び方については、「コンプライアンスのチェックなど、世間の共通ルールに基づいて動作するアプリケーションはSaaS型を利用し、BOM(Bill of Materials : 製品構成情報)管理などの企業特有の風土が現れるようなアプリケーションは個別対応型を利用するという形態をとるのがよいだろう。例えば、法規制に変更があった場合などは、当然ながらNEC側でSaaS型アプリケーションに変更を加えることになるため、SaaS型を採用している企業は何の対応もする必要がない」と解説。続けて、「SaaS型アプリケーションに関しては、自由度は低いかもしれないが初期導入コストを抑えられるので、予算の制約が厳しい中堅/中小企業でも導入してもらえるはず」とコメントし、幅広い企業に対応したことを強調した。
そのほか、Obbligato IIIにおける大きな変更点としては、RIA/SOA対応が挙げられる。Obbligatoは、前回のバージョンアップが10年以上前ということもあり、基本パッケージはクラシカルなWebアプリケーションとして提供されていたが、今回のバージョンではWPF(Windows Presentation Foundation)を採用し、操作性/表現力を向上させた。また、アーキテクチャにSOAを採用し、業務システム間の連携も容易になっている。加えて、使用した化学物質を製品や拠点の単位で管理できる機能も組み込んでおり、「REACH規則」や「RoHS指令」、「PRTR法」など、海外の法規制も含むコンプライアンス対応がなされている。
Obbligato IIIは10月5日より販売を開始。個別対応型クラウドサービスに関しては2011年3月、SaaS型サービスに関しては2011年中のサービス開始が予定されている。