米Oracleは7月7日(英国時間)、最新のビジネスインテリジェンス(BI)プラットフォーム「Oracle Business Intelligence Enterprise Edition 11g(OBIEE 11g)」を発表した。英ロンドンで開催されたローンチイベントでは、Oracle社長のCharles Phillips氏と製品開発担当シニア・バイス・プレジデントのThomas Kurian氏らが登壇し、最新のBIの機能や戦略について語った。

Charles Phillips社長

製品開発担当シニア・バイス・プレジデントのThomas Kurian氏

BIEE 11gは、Oracleが約3年ぶりに発表するBI新製品となる。買収した複数のベンダの技術を統合し、スイート製品に仕立てた。中心となるのはSiebelのBI技術とHyperionから取得したOLAPサーバ「Essbase」で、「Fusion Middleware」の他のコンポーネント、運用管理ツール「Oracle Enterprise Manager 11g」などとの統合を強化した。

全体の戦略について語ったPhillips氏は、BIでも「統合スイートのアプローチを応用した」と説明する。

さまざまなアプリケーション、データソースがある中、データの一貫性が課題となっている。「同じ質問に対し、5つの違う答えが返ってくるようではBIとはいえない」とPhillips氏。Common Information Model(CIM)コンセプトにより、単一のソースからデータを抽出できるだけでなく、データに一貫性を持たせ、これを土台にさまざまな目的に利用できるという。具体的には、すべてのデータソース、計算エンジン、ルール、ワークフローなどで共通のメタデータを持たせた。「実現に数年を要した」「シークレットソース(重要な差別化)だ」とPhillips氏は述べる。

Kurian氏は、「コンプリート」「オープン」「統合」の3つのキーワードから、BIEE 11gの特徴を説明した。

1つ目のコンプリートでは、ROLAP(リレーショナルOLAP)、MOLAP(多次元OLAP)、スコアカード、レポーティングの4種類の分析を、技術的に統合された共通のBI土台で行う。BIと業績管理アプリケーションで同じ土台を利用するのですぐにバリューを得られる。また、ビジビリティを強化、事業について一貫した理解を得られ、事業戦略との連携を強化できるという。

ROLAPとMOLAPで同じ土台を利用することは、パワーユーザーもエンドユーザーも同じインタフェースを利用することを意味する。同時にクライアント側も、ブラウザベースのUI、Microsoft Office、モバイル端末と幅広く対応する。

2つ目のオープンとは、

  1. リレーショナルDB、DWH、多次元データソース、Excelなどの非構造化データ、とあらゆるデータソースから情報を得られる
  2. Oracle、SAPなど、あらゆるアプリケーションソースを利用できる
  3. エンタープライズIT環境に実装でき、シングルサインオンやディレクトリなどの既存のシステムへの投資を保護する

の3つを意味するとKurian氏は説明する。

3つ目の統合はPhillips氏のCIMを補足するものとなる。共通のユーザーインタフェース、共通のメタデータ土台、共通のセキュリティモデル、共通の運用管理インフラ、共通のデータソースレイヤ、共通のクラスタリング環境、と6つを挙げた。

OBIEE 11gではさまざまな新機能が導入されており、Kurian氏はそのいくつかを紹介した。

ダッシュボードは新しいグラフィックエンジンを採用、ライブピボット、階層列を取り入れたドリルダウン、チャートズームなどインタラクティブ性を強化した。

洞察からアクションへの「サイクルを短縮する革新的な技術」とPhillips氏が強調したのが、「Action Framework」だ。得られた洞察とビジネスアクションをリンクするもので、ビジネスプロセス、Webサービス、Javaメソッドなどを開始できる。

同じく新機能となるスコアカードでは、「Oracle Scorecard」「Strategy Management」を統合した。目標を設定し、KPIを利用して成果や経過を評価し、その情報をチームメンバーと共有できる。「ツールとチャートの一貫性とコラボレーションを支援できる」とKurian氏は述べる。

洞察からアクションに結びつける「Action Framework」

スコアカード機能を統合

検索やコラボレーションも特徴となる。タグ付けによりレポートの検索が可能となり、「WebCenter Space」統合によりダッシュボード内でコラボーレーションが実現する。「表計算シートと電子メールのやりとりから解放される」とKurian氏。検索は開発者やBI管理者にもメリットをもたらすという。

レポーティングでは、「Oracle BI Publisher」(旧製品名「Oracle XML Publisher」)をBI土台に含んだ。全ソースで共通のレポートレイヤを利用、データ抽出やフォーマットなどの作業を分離し、サーバをクラスタ構成にして高い負荷に対応した。この結果、ある米国銀行顧客の場合、1週間で約1万件のレポートを73言語で作成できたという。シンクライアントのレポート設計エディタを利用して、Webベースのインタラクティブなレポートから"ピクセルパーフェクト"なレポートまで、さまざまなレポートを作成できる。

Kurian氏は最後に、管理面での特徴として、Enterprise Manager 11gとの統合について触れた。Enterprise Manager統合により、インストール/設定、システム管理、性能モニタリング/チューニング、タスクの自動化をすべて同一環境で行えるという。セキュリティでは、アクセス制御の強化、各種シングルサインオンソリューションを利用できる。

地理空間データを利用したマッピングなども紹介された

「iPad」でデモ

OracleはBIでは、米IBMの「Cognos」、独SAPの「BusinessObjects」、米SAS Instituteなどと競合している。OBIEEは3年の月日をかけただけあり、前評判は悪くなさそうだ。Forrester Researchのアナリスト、Boris Evelson氏はイベント終了後にブログで、BIだけでなく全Fusion Appsで共通のEIM、次のアクションとの連携などが他社との差別化になる、と評価している。