『アバター』や『アイアンマン2』のVFXを制作者が語る

オートデスクは、都内にて最新の映像制作に関するイベント「Autodesk Presents Lightstorm and ILM Blockbuster Tour 2010+After NAB 2010」を開催した。このイベントのテーマは「"The Power of Modernized Pipeline"映像制作における最新動向と今後の方向性の紹介」。映画、テレビ、ゲーム、デザイン業界関係者などを対象にイベントは開催された。

総勢300名以上もの来場者が詰め掛けた「Autodesk Presents Lightstorm and ILM Blockbuster Tour 2010+After NAB 2010」。ステレオスコピックやそれに纏わるパイプラインについて各業界が注目している証だろう

主催者であるオートデスクからは、昨今注目を集めている「バーチャル・シネマトグラフィ」や「ステレオスコピック(立体視)」をテーマにセッションの口火が切られた。アイデアからコンセプトメイキングを行い、形にしていくという過程で、オートデスクが提案するバーチャル映像制作環境を含めたステレオスコピック映像制作の方向性についてのプレゼンテーションが行われた。オートデスクは、バーチャル・ムービーメイキングとステレオスコピックを融合させることで、如何にストレートなパイプラインを組めるかに焦点を当てているという。仮想的にデスクトップ上でチームが映画を作成する「バーチャル・プロダクション」というオートデスク流の概念をベースに、「Autodesk MotionBuilder 2011」によってストーリーボードを作成。「Autodesk Lustre 2011」を用いてREDで撮影された4K×2(L/R)の映像を色調補正し、「Autodesk Maya 2011」や「Autodesk Flame 2011」を駆使してステレオスコピック映像を実際にフィニッシュさせるというデモンストレーションが行われた。注目したいのは、それぞれのアプリケーションで作成したデータをシームレスに連携させることが可能なファイルフォーマット「FBX」の存在だ。これにより、制作者間でやり取りされる様々なデータを確かなものとして受け渡すことができ、円滑な作業を実現することが可能となる。また、後半では「Autodesk Smoke 2011」のプレゼンテーションが行われ、「Autodesk Softimage 2011」や「Autodesk Maya 2011」と連携しバーチャル・セット上にクロマキー・バックで撮影された人物を合成するデモンストレーションが実演された。

オートデスクが考える「バーチャル・プロダクション」を形作るオートデスク製品群と、その血液とも呼べる新たなファイルフォーマット「FBX」による一貫したデータの利用により制作者間のコミュニケーションが大きく改善するという

来場者の注目を集めていたのが、第82回アカデミー賞で視覚効果賞、美術賞、撮影賞の3部門を受賞した映画『アバター』と、『アイアンマン』、『アイアンマン2』の制作陣によるセッションだった。まず、ゲストスピーカーとして登壇したのはライトストーム・エンターテインメント(Lightstorm Entertainment)よりノーラン・マーサ氏。「傑作に至るまでの道程」と題した講演では、4年間に渡り制作に携わってきた映画『アバター』におけるバーチャルシネマ制作のプロセスを、実際に制作現場で用いた映像を交えながら紹介。次いで、先般公開された映画『アイアンマン2』でデジタル・アーティスト・スーパーバイザーとして制作に携わったインダストリアルライト&マジックシンガポール(Industrial Light & Magic Singapore:ILM Singapore)のブレナン・ドイル氏が登壇。「ASIAの秘めた力」と題し、「アイアンマン2」におけるVFX映像制作ならではの試行錯誤を繰り返した制作舞台裏を語った。

ライトストーム・エンターテインメントのノーラン・マーサ氏。映画「アバター」で象徴的なホームツリーが倒れるシーンなど関して来場者から質問も寄せられた

ILM シンガポールのブレナン・ドイル氏。「どんな映画制作においても独特の課題や問題がありそれを解決する必要がある」と語った

また、スポンサープレゼンテーションとして日本ヒューレット・パッカードとエヌビディアが登場。日本ヒューレット・パッカード株式会社は、オートデスクとの協力体制と、その中核を成すTurnkeyソリューション製品の紹介。エヌビディアからは、最新技術のトレンドやCUDAテクノロジーによる処理速度高速化の事例が紹介された。両社のソリューションを直接目にする機会とあり、セミナー会場に設けられた展示ブースに来場者たちは熱い眼差しを向けていた。

休憩時間に日本HPのワークステーション「Z800」とエヌビディアQuadroソリューションの実機デモに見入る来場者の姿も見受けられた

Z800の筐体はBMWデザインワークスによる意匠。6コアXeonとエヌビディアQuadroにより最高級のパフォーマンスを発揮する