日本経済団体連合会(経団連)と日本商工会議所、経済同友会は6月18日、同日に政府が「新成長戦略 ~『元気な日本』復活のシナリオ~」を閣議決定したことを受けて公式コメントを発表した。以下にその全文を掲載する。

日本経済団体連合会 会長 米倉弘昌氏(住友化学会長)のコメント
「経団連では、かねてより具体的な成長戦略の早期策定と実行を求めてきた。今般、「新成長戦略」が閣議決定されたが、わが国の産業界の競争力強化から環境・エネルギー、観光・地域活性化、雇用創出にいたるまで、日本経済が抱える主要課題の解決に向けた取組みについて、定量的な目標や実施の時間軸を含め、具体的な形で示されたことを評価する。グローバルな競争の激化、長引くデフレと景気の低迷、進行を続ける少子高齢化という困難に直面しているわが国にとって、経済を再生し、再び成長軌道に乗せることは待ったなしの最重要課題である。経済界としても一丸となって民間活力による持続可能な成長の実現に向けて果敢に挑戦する。政府には、菅総理の強いリーダーシップの下で、新成長戦略に盛り込まれた具体策を早期かつ着実に実行に移すよう、改めてお願いしたい」

日本商工会議所 会頭 岡村正氏(東芝相談役)のコメント
「『新成長戦略』がまとめられたことを歓迎する。菅政権が、『強い経済』、『強い財政』、『強い社会保障』の一体的な実現をめざす方向性に共感を覚える。また、商工会議所がかねてから主張してきたデフレの早期克服の重要性について、新成長戦略において、2020年度までの前半でデフレを終結させ、後半で成長力を高めるという経済財政運営の基本方針を定めたことは評価できる。今後、新成長戦略が実行されていく中で、地域経済を担い、多くの雇用を支えている中小企業がどのような成長を遂げることができるのか、強い関心を持っている。中小企業が勇気づけられるような施策の展開を強く望みたい。菅総理のリーダーシップの下、政府においては、21の国家戦略プロジェクト及び実行計画(工程表)に盛られた政策の実現に向けて、スピード感を持って果敢に実行してもらいたい。強い経済が実現することを大いに期待する」

経済同友会 代表幹事 桜井正光氏(リコー会長)のコメント
1. 菅総理が掲げた「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」に向けた一体的立て直しの基本方針の下、「強い経済」を具体化する「新成長戦略」がとりまとめられたことを歓迎する。特に、需要サイドのみに重点を置いた考え方を転換し、供給サイドにも目を向けた戦略となっていることは、真に持続的な経済成長の実現をめざす上で心強い。
2. 21の国家戦略プロジェクトを含む7つの戦略分野につき、実行計画(工程表)を明記したことを評価したい。ただし、今回の成長戦略には、これまでの政権でも採り上げてきたものの、実現していない政策も含まれている。これらを着実に実施し、成果に結びつけるためには、それぞれの戦略分野を担う担当大臣を明確にすることが重要である。それによって、国家戦略室や内閣府の進捗管理に基づくPDCAサイクルが機能することになる。
3. 企業競争力強化と外資系企業立地促進に向けて、「法人税実効税率引き下げ」の方向性を明確に打ち出されたが、具体的水準の決定や早期実施に向けて、今後も力強い政治的リーダーシップの発揮を期待したい。
4. アジア地域の成長力の取り込みとして、日本の「アジア地域拠点化構想」は重要戦略であるが、地域との戦略的EPA、FTAの推進とともに、農業を含む市場開放と抜本的な競争力強化政策まで踏み込むべきである。
5. 医療、介護、保育、教育、農業などの分野で「課題解決型」の成長戦略を展開するためには、より一層の規制改革が不可欠である。「幼保一体化」など一部の施策は明記されているものの、規制改革による民の活力の最大活用を図るためにも、より広くよりきめ細かく取り組むことを求めたい。
6. 成長領域や戦略的政策課題などそれぞれについては妥当なものが並ぶが、2020年までのマクロ経済目標との関連性が不明確であり、また「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」に向けた一体的立て直しの基本方針を立てながらも、特に当経済成長戦略と「強い財政」との一体性も不明確である。これらの明確化を求めたい。
7. 経済成長戦略の牽引役となるのは企業であり、企業としても絶えざる技術革新や経営革新に挑戦し、健全な市場競争を通して新しい成長分野を開拓し、需要の創造、雇用の創造を実現していく覚悟である。