宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月11日、2010年5月21日に種子島宇宙センターから打ち上げられた小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」の運用において、6月3日にセイルの展開を開始、6月10日に地球からの距離約770万kmの地点において、セイルの展張および薄膜太陽電池による発電を開始したことを確認したと発表した。

セイル展開の手順

具体的には、6月8日に1次展開の最後のシーケンスを、6月9日に2次展開を実施。2次展開開始のコマンドを送ってから、伝播遅延のため最初のデータが見えるまで46秒かかるため、運用室では緊張した状態がしばらく続いていたものの、最初に送られてきたスピンレートや姿勢データから正常に展開しているということが判明、続いて、モニタカメラで撮像した画像の一部データをダウンリンクし、画像からもセイルが展開していることが確認できた。

1次展開中のIKAROSに搭載されたモニタカメラ画像

また、6月10日にセイルが綺麗に展開している「展張状態」の画像を取得、2次展開後の確認作業を終えセイルの展開成功を確認した。

2次展開後の展帳状態の膜面画像(左上がCAM-H1、右上がCAM-H2、左下がCAM-H3、右下がCAM-H4の映像。膜面の下に見えている左側のフレーム状のものが、膜面と本体を電気的に結合するハーネス。右側の線状のものが膜面と本体を機械的に結合するテザー。1番したに写っている棒状のものが、展開後の回転ガイド)

さらに合わせて実施した薄膜太陽電池の発電も確認。これにより、大型膜面の展開・展帳、薄膜太陽電池による発電というミニマムサクセスが達成されたこととなる。

2次展開終了後の視野イメージ(IKAROSに搭載しているモニタカメラは水平画角が115°と広角であるため、4台のカメラで360°全周をカバーすることができる)

なお、JAXAでは引き続き、薄膜太陽電池による発電の状態を計測し、光子圧を用いた加速およびそれによる軌道制御の実証を行い、ソーラーセイルによる航行技術の獲得を目指すとしている。