米マイクロソフトが自治体向け施策を加速させている。

米マイクロソフトUSナショナルテクノロジーオフィサー兼ステート&ローカルガバメントテクニカルオフィサーであるStuart Mckee氏

米政府では、American Recovery & Reinvestment Act(ARRA)と呼ばれる経済対策を展開しているが、それにあわせてStimulus360と呼ばれるソリューションの提供を開始している。

米マイクロソフトUSナショナルテクノロジーオフィサー兼ステート&ローカルガバメントテクニカルオフィサーであるStuart Mckee氏は、「政府の施策に対しては高い関心があるが、その一方で自治体では、作業工数の増加など、困惑する声があがっている」と前置きし、「自治体にとっては、この予算がどこからくるのか、また、どこにあるのか。これまで経験がないものがどうやって処理するのか。そして、すべての資金が、どう使われるのかを見えるようにしなくてはならないという課題に直面している」とする。

Mckee氏自身も、マイクロソフト入社前には、人口600万人を抱えるワシントン州のCIOを勤めた経験を持ち、米国の地方自治体における課題などにも精通している。

American Recovery & Reinvestment Act(ARRA)では、7000億ドルの予算が計上され、農業、国家安全、エネルギー、ヘルス、住宅関連などの分野でそれぞれ活用されようとしている。この予算がこれから地方自治体に下りてくることになる。

「自治体にとっては大変な仕事になるのは明らか。この作業に対して、いかに迅速に、効率的に対応できるかが課題となる」

American Recovery & Reinvestment Act(ARRA)

そこで、まずマイクロソフトが取り組んだのが、これらの処理を行うためにExcelで利用できるテンプレートを提供。これにより、作業の効率化を実現することであった。

「地方自治体においては、これだけ多くの予算を計上するプロジェクトでも、Excelを活用して作業を行うという考え方がある。その点では、多くの地方自治体での課題解決につながる」としている。

一方で、「Stimulus360」と呼ばれるSQLサーバー、Excel、Dynamicsなどを活用したソリューションパッケージを、全米6社のパートナーを通じて提供。テネシー州やカリフォルニア州、ウェスコンシン州などが、すでにこれを活用している。

「プロトタイプは2か月で作ることができた。その後、政府がレポーティングの要件や締め切り時期などを変更したことで、これに対応するといった取り組みも行った。Stimulus360は、マイクロソフトの製品を持っていればコストはゼロである。そして、ソースコードも共有し、パートナーが実装する仕組みとした。マイクロソフトが1ドルの売り上げをあげると、パートナーが7ドルの売り上げをあげることができるという仕組みは、ここでも生かされている」とした。

2010年4月1日からStimulus360を活用したカリフォルニア州では、スタッフの間から週末に作業をやることがなくなったという声が出ている。また、ウェスコンシン州では、クラウドベースのソリューションを活用している。

「政府では様々な施策を打ち出してくるが、レポーティングの観点で作業効率を図ることができるソリューションを確立すれば、次の施策への応用も可能になる。マイクロソフトにとっても、パートナーにとっても新たな商機が出てくるものだといえる」とした。

一方で、マイクロソフトが提案するS+S(ソフトウェア+サービス)に関しては、「政府や自治体こそが、この仕組みを活用するメリットがある」とし、「マイクロソフトの提案は、クラウドかオンプレミスの二者択一ではなく、どちらも活用できるというもの。政府の場合は、機密情報を扱っており、あわせて公共サービスもある。クラウドには向いていないもの、向いているものがあり、どちらのサービスも活用できる提案が必要になる」などとした。

さらに、Mckee氏は、「プロジェクト・ダラス」に関しても言及。「国立公園に行く際に、地図を役所に行って購入するのではなく、情報を携帯電話にダウンロードし、しかも課金するというようなインフラとして提供するもの。クラウドを活用して、政府機関や地方自治体を支援していくプラットフォームとなる」などとした。

だが、その一方で、「クラウドという観点で捉えると、まだ初期段階であり、多くのチャレンジがある。また、対応していかなくてはならないこともある。努力とともに、投資をしていかなくてはならない」としたほか、「マイクロソフトがやっていることは地方自治体にとっては重要なことである。これを実現していくためには、地方自治体の話を聞くことも重要である。また、パートナー会社との連携も大切である」として、米国における地方自治体向けビジネスにおいて、エコシステムの活用を推進していく考えを示した。