オートデスクは業務用のビジュアルエフェクト フィニッシングシステムの発表会を開催した。この発表会では、「Smoke」シリーズの最新版「Smoke 2011 MAC OS X」が紹介された。

今回の発表会では、現在注目を集めている3D映像に関連した機能を中心に紹介されていた。オートデスクがクリエイティブ フィニッシング製品として提供しているツール群のなかで、3D映像(ステレオスコピックと呼ぶ)を扱うことができるのは「Inferno」、「Flint」、「Flame」、「Flare」、「Smoke」、「Lustre」。同発表会のデモンストレーションでは、Smokeシリーズの最新版Smoke 2011 MAC OS Xが使用された。

プレゼンテーションを行なったオートデスク マーケティング本部 インダストリーマーケティングメディア&エンターテインメント・城戸孝夫氏は、「すでにアメリカでは多くのプロダクションが3D映像制作を開始しており、今後国内でも3Dの映像はもっと身近な存在になるだろう」と語った。

リアルタイムで3D映像を編集できる「Smoke」

「3D映像の編集」と聞くと複雑に聞こえるかもしれないが、行なっている作業は2台のカメラを使って撮影した映像を同時に編集するというもの。従来の映像編集ツールはひとつの映像をひとつのトラックにはめ込んで行なうが、オートデスクのステレオスコピック対応のツールでは、映像トラックに「L」と「R」のふたつのトラックが用意されている。わかりやすく例えると、一般的な映像編集ツールのステレオ音声トラックのような感じだ。このLとRのふたつの映像トラックがある部分に、2台のカメラで撮影した映像を入れると、『アバター』のような3D映像を編集できる仕組みとなっている。

会場では実際に3D映像を編集している様子を、用意された3Dメガネを着用して見ることができた。LとRの映像をリアルタイム編集していたため、映像編集中も3Dメガネを通してつねに立体的に見える。Smokeを使って編集を行なうと、プレビューも待たされることはなく、スムーズに再生されていた。

興味深かったのは立体の深度調整について。従来の2D映像はモニターのパネル表面上で再生されるが、3D映像の場合はモニター表面よりも手前で再生されているように見える。Smokeでは、この立体的に見える部分の深度も調整可能なのだ。たとえばロゴが画面から飛び出てくるようなシーンを編集する際に、ロゴが眼前まで迫ってくる場合と、モニターから少しだけ浮き出て見えるような場合では、立体感が異なる。デモンストレーションでは、簡単に物体を前後に移動させていた。3D映像の編集作業ではモニターの表面を「ゼロポイント」と呼び、この地点からどれだけ出ている・引っ込んでいるかを設定するそうだ。

用意されたふたつの映像がズレていても編集可能

高価な3Dカメラで撮影した映像でも、左右の映像が微妙にズレている場合がある。むしろ、まったくズレていない映像のほうが珍しいそうだ。このような映像を編集する場合、LかRのどちらかの素材を調整しなければ3D映像として完成させることはできない。会場ではズレた素材を使用し作った3D映像が上映されたが、かなり違和感を感じた。このような不完全な素材しかない場合でも、Smokeの機能を使えば正しい素材に修正が可能。もしも2台のカメラの固定位置がズレていた場合は映像を上下左右に移動させる。また、時間軸(フレーム)がズレていた場合はLとRの映像を正しい時間軸に微調整する。これらの設定を終えて、もう一度先ほどの映像を見ると、今度は違和感のない3D映像として再生された。

Autodesk Smoke 2011 MAC OS X Edition softwareのメーカーはライセンス価格で261万6,600円。年間保守契約やアップグレードやサポートなどのサービスを受けられるサブスクリプション価格は34万8,600円。動作環境はMac PRO 2008、2009。CPU:Intel Xeon 5000以上、グラフィックカード:Nvidia Quadro FX 4800、Quadro FX 5600、ビデオカード:AJA KONA 3となっている。

3D映像の編集を快適に行える「Smoke」
(c)Image courtesy of North Avenue Post