David Rivas氏

スマートフォンで業界の勢力図が塗り換わる中、携帯電話最大手のNokia(フィンランド)は「Symbian」のオープンソース化に加え、2010年2月には米Intelと「MeeGo」を発表した。NokiaのLinuxベースのモバイルプラットフォーム「Meamo」とIntelの「Moblin」とをマージすることになる。その第1弾イメージが3月31日(現地時間)にリリースされた。

2月にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2010」で、Nokiaのプラットフォーム戦略を担当するDavid Rivas氏(技術マネジメント担当副社長)に話を聞いた。

--MeeGoの背景や狙いについて教えてください。

Nokiaはプラットフォーム技術に大きな投資を行ってきました。Intelとの提携により、これまでの投資をより広範な製品に向けて活用できます。

Intelとの提携は、世界最大のチップメーカーと協業するという点に加え、製品ラインナップの拡大、開発者のターゲット拡大という2つの意味を含みます。Nokiaと開発者に、選択肢とソフトウェア技術を活用するモチベーションを拡大するものとなります。

Maemoでは高性能/ハイエンドに位置する携帯端末を数機種開発する計画でした。MeeGoでもこの位置づけは大きく変わりません。

--MeeGoはそのままMaemoの代わりになるということでしょうか?

Nokiaのプラットフォーム戦略は2009年から変わっていません。ハイエンドではMaemo/MeeGo、ハイエンドからローエンドはSymbian/S60、エントリレベルのボリューム市場ではS40という3つのソフトウェア技術を利用する戦略です。

他社はプラットフォームの数が増減しているところもあるようですが、Nokiaは以前からこの3本柱です。この3種類で、エンドユーザーに合わせて仕様を作成し、最適なプラットフォームを柔軟に選択できます。われわれの製品ポートフォリオを支えるのにちょうどいいと考えています。

Maemoは多くのことができるプラットフォームで、Oviサービスを統合して、まったく新しいユーザーエクスペリエンスにフォーカスしたアプリケーションを構築できます。可能性はさらに広がります。ポケットに入らない端末でも利用でき、Nokiaが事業を拡大する上で戦略的決断を支援するものとなるでしょう。ご存知のようにNokiaは昨年、"ブックレット"とよぶ小型PCを発表しています。われわれは技術企業で、コンシューマ分野で製品を提供してきた経験、インダストリアルデザインの経験があります。携帯電話市場が成長すれば(Nokiaがフォーカスを拡大する可能性もあり)、MeeGoのような高機能なプラットフォームはさらなるチャンスをもたらすと期待しています。

MeeGo端末を何機種投入するかについては、当面は限定的だと思いますが、動向によっては増加の可能性もあると思います。

--MeeGoをLinux Foundationでホスティングする理由は?

Symbian(非営利団体のSymbian Foundationがホスティング)と同じで、技術のスチュワードシップを中立的立場の非営利団体が最適と判断したためです。

--MeeGoのロードマップは?

MaemoとMoblinという両オープンソース技術をマージすることになります。マージしたプラットフォームの公開時期は間もなく発表します。Maemo搭載機は2010年後半に登場を見込んでいます。

Symbianの場合、組織(Symbian Foundation)形成、プラットフォーム公開に続き、2010年2月にソースコードを公開しました。当初は18カ月後を予定していたが、予定を4カ月前倒しできました。これはSymbian Foundationのメンバーともども、誇りに思っています。

--シェア2位のSamsungが「Bada」を発表し、オープンソースではGoogleの「Android」の採用も目立ちます。競争をどう見ていますか?

個人的な意見として、これ以上モバイル用のソフトウェアプラットフォームは不要と思います(笑)。

率直にいうなら、プラットフォームが増えて競合がさまざまなプラットフォームを使うことは、Nokiaにとって有利になると見ています。

われわれは3つのプラットフォームと、それに対応する単一の開発ツール「Qt」というシンプルな戦略を持っています。QtはSymbianとMaemo(MeeGo)に対応し、開発者は両方のプラットフォームに向けてコードをコンパイルできます。Symbian端末は市場に3億台以上あり、台数ベースでみても、地域ベースでみても最大です。開発者はこれらの携帯電話をターゲットにできます。

Bada、Android、Windows Mobileなどさまざまなプラットフォームがあることは、開発者にしてみればターゲットが絞りにくくなることを意味します。開発者がビジネスで成功するのに必要なことは、アプリケーションが動く魅力的な端末と台数、この2つです。

Androidについてコメントするなら、たしかに機種が増えているようです。しかし、AndroidはGoogleがコントロールしており、ロードマップも公開されておらず、ほとんどのパートナー企業がロードマップを知らないといわれています。Googleは今後、これらの懸念に加え、分断化などの問題にも応えていく必要があるでしょう。

オープン性という意味では、Symbian以上に公正にオープンなプラットフォームはないと思います。特定企業のコントロールという懸念はなく、自由に利用できます。コードが公開されるまでは懐疑的な人もいたと思いますが、2月にコードが公開されました。今後は採用が加速すると期待しています。MeeGoもまた、Symbianと同じ意味でオープンなLinuxプラットフォームになります。

--Nokiaのプラットフォーム戦略で、Qtがカギを握るということですね。

その通りです。

Qtは2つの点で重要です。1つ目は、ユーザーエクスペリエンスを可能にするパワーを与えます。2つ目に、開発者エクスペリエンスを大きく改善し、シンプルにストレスなくアプリを設計/構築できます。

Qtは現在Maemo(MeeGo)、Symbian、Windows Mobileに対応します。NokiaがQtのAndroid対応に投資する計画はありませんが、オープンソースなのでだれかがやろうと思えば可能です。また、Qtはクロスプラットフォームなので、分断化にも対応できます。

--ユーザーインタフェースの強化について、計画を教えてください。

MeeGoについてはまだ話せる段階にありません。

Symbianではまず、Symbian^3からお話します。ユーザーエクスペリエンスを大規模に改善し、性能も改善します。なかでもグラフィクスの性能は3倍高速となります。OS全体の複雑性を排除し、コンシューマーが容易にアプリケーションにアクセスできるようになります。キャパシティブタッチ画面向けのマルチタッチ機能も対応します。

これらすべてをSymbian^3で実現した結果、非常に競争力のあるOSになるでしょう。

Symbian^4は現在、作業を急ピッチで進めているところです。まずは、ユーザーエクスペリエンスを完全に再設計します。エクスペリエンスをスムーズにするよう見直し、改良していきます。Nokiaは先に、インタフェース関連の提案を行いました。メッセージング、SNSの利用、マルチメディアアプリの利用と、個々のエクスペリエンスをなめらかにするのですが、これは単にアプリケーションを提供するのではなく、コンシューマーがどのように端末を使っているのかを理解し、1つの作業から次の作業を自然に容易にします。これにより、Symbianのユーザーエクスペリエンスはさらに改善され、携帯電話のユーザーエクスペリエンスレベルをさらに引き上げることになるでしょう。

--スマートフォンのマス化が注目されています。ここでのNokiaの戦略は?

現在、われわれのSymbian携帯電話の中でも低価格帯の機種にスマートフォン機能を持たせています。大きなチャンスは途上国市場にあると見ており、手ごろな価格でスマートフォン技術とサービスを提供していく計画です。スマートフォン、フィーチャーフォンで決済などの機能を利用できる「Nokia Money」などのサービスも、差別化につながると思います。