MetaMojiは、オントロジー工学に基づいた機能モデリングツール「OntoGear」を開発し、同ツールの評価版を5月10日から無償提供開始することを発表した。

MetaMoji 代表取締役社長 浮川和宣氏

MetaMojiは、元ジャストシステム社長の浮川和宣氏が昨年12月に立ち上げた研究開発企業。同氏は今回の製品発表会において、「大げさかもしれないが、人類にとって物事を理解するメソッドとしてこれ以上のものはない」と同ツールに対する熱い思いを披露。「(ツールを理解するための)勉強は必要だが、広く世の中で使ってもらいたい」という考えを示した。

今回発表されたツール「OntoGear」の理論的背景となっているのはオントロジー工学。人工物の機能や構造をわかりやすくするほか、第三者には見えにくい設計の"意図"などを顕在化させたり、潜在的な不具合の原因などを把握したりすることなどが可能となる。同ツールは、この分野における権威である大阪大学 産業科学研究所の溝口理一郎教授と共同で開発された。

大阪大学 産業科学研究所 溝口理一郎教授

溝口教授によると、オントロジーとは「"存在"に関する体系的な理論(存在論)であり、人間が対象世界をどのように見ているかという根源的な問題意識を持って物事をその成り立ちから解き明かし、それをコンピュータと人間が理解を共有できるように書き記したもの」だという。オントロジー工学では、このような物事の概念が「機能」として表現されるという。

例えば家電製品の加湿器の場合は「蒸気を出す」という製品の目的がゴール=機能とみなされる。そして、「水を出す」「水を蒸発させる」といったそのためのいくつかの方法(分解の仕方)に対して、やり方(方式)がひも付けられ、これを"見える化"したものがフローチャートのような「機能分解木」となる(同教授はこのようなことを実現するツールを「機能分解木表現ツール」と表現している)。

このツールを利用することによる効果としては、再利用が容易なことによる設計効率・業務のスピード向上のほかに、共同研究に参加した技術者からは「発想の転換にもつながった」という声も上がってきているという。

発表会では、元ジャストシステムの研究部門の責任者であり、現在は大阪大学産業科学研究所の特任教授である高藤淳氏によるツールの説明とデモが行われた。

大阪大学 産業科学研究所 高藤淳特任教授

OntoGearは、機能分解木記述ツール「OntoGear SE(Standard Edition)」と方向知識編集ツール「OntoGear WKE(Way Knowledge Editor)」、統合モデル記述ツール「OntoGear AE(Advanced Edition)」、統合モデル3D閲覧ツール「OntoGear FFN(Function's Forest Navigator)」、アプリケーション開発用ライブラリ「OntoGearCore API」、各種周辺ツール「OntoGear Gadgets」、機能的知識管理・配布サーバ「OntoGear Server」といったソフトウェア構成となっており、今回の発表の対象となっているのはOntoGear SEとOntoGear WKEの2つ。

今回評価版の無償提供が発表されたOntoGear SEとOntoGear WKEはジャストシステムのXMLアプリケーション・フレームワーク「xfy」で構築されたデスクトップアプリケーションだが、将来的には「SaaS形式での提供も視野に入れている」(浮川氏)という。

同ツールは2011年からは有償化が計画されているが、現時点では価格やビジネス展開等に関する詳細は未定。当面は主に製造業の設計・生産管理・品質管理・知財管理部門のユーザーをターゲットとしてツールの普及を促したい考えだ。

OntoGear SEの画面イメージ