10月に米国ロサンゼルスで行われたAdobe MAX 2009。今年はFlashファミリのアップデートがいくつも行われたが、最も注目された発表といえば、やはりFlashのiPhone対応 - Flash Professional CS5においてiPhoneアプリ開発が可能になったことだろう。キーノートでケビン・リンチCTOがみずからiPhone上でFlashアプリケーションを動かすデモを行ったときには「ついにAppleがFlashサポートを決めたのか!?」と誰もが驚いたが、実は、FlashプロジェクトをネイティブなiPhone/iPod Touchアプリケーションにコンパイルする技術をAdobe Labsが開発した、というものだった。言葉は悪いが、「FlashはiPhoneにいつ対応するのか」というユーザの声に、無視を決め込むわけにはいかなくなったAdobe側のやや強引な回答、という感が否めない。
もっとも、どんな形であれ、iPhone上でFlashアプリが動くということはFlash開発者にとって待ち望んでいたニュースだったらしく、Adobe SystemsでFlash Professional担当プロダクトマネージャを務めるリチャード・ガルバン氏も「こんなにも多くのリアクションがあるなんて思ってもいなかったよ。みんな本当に心待ちにしていたんだなとあらためて思った」と、反響の大きさを振り返る。
Appleは今もiPhoneのFlash対応に関しては何の動きも見せていない。AdobeはMAXの直前まで、FlashのiPhone対応については「AppleがOKしなければどうしようもない」という主旨の態度を見せていたが、ガルバン氏は「Apple側に投げたボールがいつまで経っても返ってこない以上、Adobeが新しいボールを用意せざるを得なかった」という。Adobeは"Open Screen Project(OSP)"という、あらゆるデバイス上 - 巨大スクリーンから携帯電話まで - でFlashが動作することをめざすプロジェクトをさまざまなベンダとともに進めている(ただしAppleはこれに参画していない)。このOSPの技術を使い、ActionScript 3で書かれたアプリをiPhoneのネイティブコードに変更するという手段を選んだ。「最良の方法ではないことはわかっているし、次期尚早だったかもしれない。だが、我々は市場のすべてをコントロールできるわけではないし、将来の確実な予測もできない。だから、現時点でできる限りのことをユーザ/開発者に届けたいと思ったら、この方法しかなかった。iPhoneに対応させたことよりも、すべてのスマートフォン上でFlash Player 10.1を動作させるという、OSPの目標にあった行動だったことを理解してほしい」(ガルバン氏)