--UPMCでは仮想化によって目覚しい効果を上げたと聞いているが、具体的にはどのような効果があったのか?--

シコラ氏: 仮想化によってITリソースの最適化を実現したことで、システムのパフォーマンスと信頼性が向上した。仮想化環境では、1つのコンピュータですべてのアプリケーションを共有しているので、効率よくITシステムの運用が行える。そのうえ、コストは従来よりも少なくて済んでいるのだ。
また、技術の標準化も仮想化を導入させるためのポイントだ。複数の技術の上でシステムが構築されていると、最適化は行えない。そのため、われわれは5バージョンのUNIXを1バージョンに統一した。
なお、CIOとしては効果が上がっていることを確認するために、測定することが大切だ。仮想化環境では、ユーザーごとにアプリケーションをコントロールし、利用状況を把握することができる。これは仮想化成功のキーの1つだ。仮想化のメリットを考えると、企業・組織において採用するのが当然となる時代が訪れると思う。「仮想化にリスクがある」、「サービスレベルが保証されていない」などと主張する"懐疑論者"も少なくないが、惑わされないでほしい。こうした仮想化に対するネガティブな側面は、効果を測定していくことで解決できるはずだ。

--仮想化を導入する際、初期コストがそれなりにかかると聞いているが--

シコラ氏: 当然、規模に見合った初期コストを支払っているが、その金額は年間に費やすITコストよりは少ない。つまり、総コストは増えていない。にもかかわらず、使えるようになったリソースは増えている。
コスト効果を明確にするには、使ったコストをサマライズすることが大切だ。これこそ、CIOが積極的に働きかけていくべきミッションと言えよう。新たなITの導入によって、コストメリットをもたらすことができたことを明らかにできれば、「変化を起こせる人」という評価がもらえる。こうしたことの積み重ねで、CIOとしての実績を上げていくことが可能になる。自分は「今までと違うことができる」、「変革を起こせる」という強い気持ちを持つことが大切だ。

--今回のプロジェクトで採用したIBMの「Open Infrastructure Offering」という価格体系は、コストカットに有益だったか?--

シコラ氏: 一連のサービスがパッケージ化されていて、8年間の固定費を複数年で支払っていくという料金体系はありがたかった。というのも、サーバやストレージが増えても、それに伴う追加料金を支払う必要がなかったから。われわれが組織的に成長していくにあたり、IBMは柔軟に対応してくれた。

--来日した際、日本のCIOに会ったそうだが、日本のCIOの印象はどのようなものだったか? 最後に、日本のCIOにメッセージをお願いしたい--

シコラ氏: 日本で何人かのCIOに会ったが、皆、能力の高い人ばかりだった。私と同様に地方の医療向上に取り組んでおられるCIOは、アプローチと技術的な側面の双方において優れているという印象を持っている。
米国のCIOと比べると、日本のCIOはビジネスの変革を起こすべく、もっと声高に経営陣に対して意見を述べてよいと思う。ただ、それが今できていないのは、彼らの能力が不足しているからではなく、企業や組織において正しいポジションについていないからだ。