11月5日、6日に東京国際フォーラムにて「C&Cユーザーforum & iEXPO2009」が開催された。初日にあたる5日、基調講演の壇上に登場したのは、NEC 代表取締役執行役員社長 矢野薫氏だ。

「いつか起こるだろう」が現実の物となった2009年

NEC 代表取締役執行役員社長 矢野薫氏

矢野氏は「世界同時不況や、欧米そして日本の政権交代、さらには世界を牽引する中国をはじめとするアジアの台頭など、将来いつか起こると予想していた事がどんどん現実の物になった年だと思います」と語りはじめた。

今現在を見ると、景気はやや上向きとなっているが、これについて「政権交代などによって、不況への対応や、新たなる方向性への期待が持てるようになった」(矢野氏)。また、こうした現象が世界規模で起こる理由についても「まさにITがグローバリゼーションを加速しているといえるのではないか」と分析。さらに明治維新や第二次世界大戦を例に出し、「100年に一度といえる新たな時代へと立ち向かっているということだと思います」と語る。

2009年は世界の風景が一変した1年だったと語る矢野氏

ITによってグローバリゼーションが加速

この不況をしのぐためにオバマ政権がとっている、環境・エネルギー対策について触れた矢野氏は「日本においても鳩山政権がCO2排出量の25%削減を掲げています。低炭素社会の実現に向けての課題は、わたしたちの経済社会にも大きな影響を与えています」と語る。

そんな中、日本の現状は少子高齢化が進んでいるが、矢野氏は「ある意味で先進的なマーケットとポジティブに捉えている」と語っている。現実的な社会としての捉え方は、閉塞感のほうに傾いているように思えるが、これを良い方向へ導くことが大切というわけだ。

「現実的な不況への対策として、ビジネスの変革が求められています」と語る矢野氏。中でも環境変化に対応できるスピードと柔軟性を企業として持ち合わせて行くことや、社会の課題を解決するための「企業」であることが大切だという。「それを起こすのは、やはり『イノベーション』であると思っています」と矢野氏は語る。

新しい創造、すなわちイノベーションが重要となる

企業が直面する課題として、グローバルレベルでの競争の激化(G20に代表されるアジアの台頭)や、環境への配慮をはじめとする企業としての社会的責任、情報が持つスピードが世界を変えつつある中での情報システム部のあり方などを挙げ、業務プロセスの改革が必要だと説明。さらに矢野氏は「これを解決するためには、シンプル化、グローバル化、統一化、見える化といったキーワードがあると思います」と語った。

今後、企業が直面する課題

課題解決のためのキーワード

矢野氏はさらに、プロセス改革を支えるものこそがITだと解説。先進的な企業事例を指し示しながら、自社の取り組みについても言及をはじめた。「個々の組織はITを駆使して最適化を進め、成果を得ているところも多いが、全体をみると必ずしもそうとはいえないケースが多い」(矢野氏)。局所的な業務効率に役立てられてきたITだが、それが部門間やグループ企業間を跨ぐような使われ方はあまりされていない。

矢野氏によれば、お客様を起点とするシンプルなOne NEC体制の確立を目的とする「事業構造改革」、会社や組織ごとに異なる業務プロセスやルールを標準化する「業務プロセス改革」、グローバルでグループ会社が共同利用し運用を集約するクラウド指向の「ITシステム改革」を進めているのだという。

NEC自らが取り組んでいる、ビジネスの変革

業務プロセス改革では、プロセスやルールを標準化することに成功

「小さなことから始めました。例えば業務プロセス改革では、販売プロセスというものが100種類以上ありましたが、これを基本的な4つのプロセスを決め、それのサブセットとして20のプロセスへと集約しました。最初の複雑なプロセスに比べると1/5程度のシンプルなものにすることができたのです」と語る矢野氏。また、こうした業務プロセスの改革を為し得ない限り、ITの改革はありえないのだともいう。

「部門内やグループ会社内で効率化してきたITの存在ですが、これらをすべて統一することにしました。1つのシステムを全世界のグループ企業が使うことになるのです。これをエンタープライズクラウドと呼んでいます」と矢野氏。クラウド指向でグループの共通基盤を使う。実際には現在このエンタープライズクラウドを構築中とのことだが、来年1月から経理システムが稼働をはじめる見込みだという。

「従来のITシステムが排出してきたCO2は5000トンに上りますが、クラウドの導入によって2000トンに減らせると予想しています」と矢野氏は語る。オフィスにおけるパソコンをシンクライアントにすることにより削減できるCO2の量を含め、NECではクラウド環境の構築によって約60%の削減を見込んでいるのだという。

社会全体のグリーン化をはじめ、環境対応によって企業も新たな成長を遂げなくてはならない時代へ差し掛かっているとする矢野氏。業務プロセスを改革し、それをITを使ってさらに効率をあげる取り組みは個人レベルからはじまり、交通や通信といった社会インフラ、さらには地球環境との共存・共生を果たしながら、産業も活性化させてゆくという壮大なスケールで進んでいくとNECは捉えているという。

C&C技術でクラウドを進化し、人と地球にやさしい情報社会を目指す