日本アイ・ビー・エムは10月29日、グローバルのCIOを対象に行った調査結果「IBM Global CIO Study 2009」を発表した。同社はこれに伴って記者説明会を開催し、米IBMのバイスプレジデント兼CIOを務めるパトリック・トゥーレ氏とIBMビジネスコンサルティング サービス ビジネス・イノベーション・サービスのパートナーである加藤陽一氏が、同調査に関する考察を説明した。

同調査は、高成長企業と安定成長企業におけるCIOの行動様式を、「イノベーションの具現化」、「ITの投資対効果の最大化」、「ビジネスへの貢献拡大」というCIOの3つの価値を実現する役割のペアから分析した。

CIOの役割の3つのペア

IBMビジネスコンサルティング サービス ビジネス・イノベーション・サービス パートナー 加藤陽一氏

加藤氏は、グローバルのCIOと日本のCIOにおける相違点として、「外的要因の認識」、「ビジネス側から見たITの役割認識」、「CIOの活動時間とIT予算の配分」、「将来の重点テーマ」、「ITの最高責任者の役職」、「ビジネスとITとの融合」、「CIOの行動特性」を挙げた。

将来の重点テーマにおける違いは、グローバルに比べて日本のCIOは「セルフサービスポータル」や「ソーシャル・ネットワーキング」といったコミュニケーション関連のテーマに対して関心が低く、「クラウド/SaaS」と「全社横断的な人材開発」に対して関心が高いというものだ。

日本ではクラウドに対する関心が過剰なくらい高まっていることを考えると、少々意外な結果に思われる。加藤氏はこの点について、「この調査は1月から4月にかけて行われたので、今同じ質問をしたら、もっと関心が高い結果になるのでないだろうか。また、仮想化とクラウドを勘違いしたCIOもいたようで、必ずしも日本のCIOだけがクラウドへの関心が高いとは言えない」と説明した。

グローバルのCIOと日本のCIOが挙げた将来の重点テーマ 資料:IBM

また、日本ではCIOがITを専担する役員である割合が35%であるのに対し、グローバルでは75%と、CIOの役職が大きく異なる結果が出ている。このことが、グローバルのCIOと日本のCIOにおける差異を作り出している要因として大きいと思われる。

「日本ではCIOがボードメンバーに入っていることが少ないので、経営に影響を及ぼしづらいという状況にある」(加藤氏)

同調査では、自分が「ビジネスとITの融合に積極的な活動をしている」と回答している日本のCIOは、グローバルのCIOの約半分という結果が出ており、その表れと言える。

加藤氏は、「現在のような不確定な要素が多い状況の中、CEOが競争を勝ち抜いていくにはITをドライバとする必要があり、それをサポートするのがCIO。CIOが重要なテーマとして選んだBI、リスク管理、仮想化は非常にバランスがよい。BIは不確定なビジネスの状況を把握するために必要であり、仮想化はクラウドを実現するキーテクノロジーである。この2つはいわば攻めの技術だが、ビジネスは攻めだけでは片手落ちであり、守りであるリスク管理も不可欠。CIOはこれらについて、CEOが理解できる言葉で伝えていかなければならない。そうすることで、経営におけるCIOの存在感は増す」と、CIOの地位向上に対する提言を述べた。

米IBM バイスプレジデント兼CIO パトリック・トゥーレ氏

またトゥーレ氏は、「グローバルのCIOと日本のCIOにおいてスキルのレベルは変わらない。ボードメンバーとしての地位が確立されているかどうかが異なる。企業においてコスト対効果を上げていくには、CEO・CFO・CIOが共同でビジネスプロセス・リエンジニアリングを行っていく必要がある。この時、ビジネスをEnd to Endで見て、業務プロセスをリエンジニアリングできるのはCIOのみだ。つまり、ビジネスプロセスの最適化を図ることができるのはCIOだけなのだ。したがって、日本のCIOも経営層として活躍していくことが重要であり、それが企業にメリットをもたらす」と説明した。