富士通フロンテックは、2009年度上期連結決算を発表した。

売上高は、前年同期比13%減の416億円、営業利益が86%減の3億円、経常利益は前年同期の17億円からOへ、当期純利益は前年同期比の3億円の黒字からマイナス3億円の赤字となった。

富士通フロンテックでは、フロントテクノロジー事業を再編。富士通から国内流通店舗事業や公営競技事業を移管したことなどにより、上期だけで60億円の売上増の効果があったという。

金融システムなどの売上高減少で121億円減となる一方、フロントテクノロジーの事業再編による効果で60億円増。また、営業利益では金融システムの売上高減少に伴う利益減でマイナス32億円、コストダウンおよび経費削減効果で14億円となった。

2009年度上期連結決算の概況

部門別では金融システムの売上不振が響いた

フロントテクノロジー事業の再編により売上増に効果

金融システムの売上高は前年同期比14%減の162億円、営業利益は8億円減の1億円。自動機や営業店端末の需要の先送りや減少、国内外の金融機関の設備投資抑制などが影響した。

流通システムは、売上高が4%増の114億円、営業損失は4億円増となったもののマイナス4億円の赤字。前年同期にPOS端末の大型商談があったことに対する反動があったが、組織再編によって売上高で40億円の増加となった。

産業・公共システムでは、売上高が前年同期比4%減の50億円、営業損失は1億円改善したものの、4億円の赤字。システム更改の端境期にあたり、トータリゼータ端末の減少があったが、再編による増加が20億円増となった。ソフト・サービスでは、売上高が1%減の90億円、営業利益は1億円増の10億円。金融機関の投資抑制に伴う、パッケージソフトの減少が影響した。

一方、2009年度の通期見通しでは、再編効果もあり、年初の計画はそのままとし、売上高は前年比15%増の1055億円、営業利益は5%増の43億円、経常利益は19%増の37億円、当期純利益は83%増の22億円と、増収増益を目指す。

金融システム事業の売上高は374億円、営業利益は11億円、流通システム事業の売上高は309億円、営業利益は4億円、産業・公共システムの売上高は153億円、営業利益は0、ソフト・サービス事業の売上高は219億円、営業利益は32億円とする。

富士通フロンテック 代表取締役社長 海老原光博氏

富士通フロンテックの海老原光博社長は、「経済環境が悪化するなかで、こうした再編を行ったことは最悪の時期という捉え方もできる一方で、反転した時に強い事業体質に向けた準備ができることになるともいえ、なにもしなかった場合と比べて、一歩も、二歩も先に行けるようにしたい」とした。

海老原社長は、2012年度には売上高2,000億円、営業利益率10%を目指す方針を明らかにした。「親会社である富士通の社長交代があったが、当社の再編への取り組みについては、基本的な部分においてはなんら変更はない。私は、販売、開発、製造を一気通貫で対応でき、専業メーカーには負けない専業体制を確立することを目指してきた。それがほぼ完成しつつある。フロントテクノロジー事業の再編により、富士通から416人が当社に集約され、グループ全体で3,519人の体制となった。セールスパートナーも、新規に70社が増え、123社となっている。こうしたリソースを積極的に活用していく」と語った。

"専業メーカーに負けない専業体制の確立"をめざす

また、新規ビジネスとする電子ペーパーやRFID、手のひら静脈認証装置などの状況についても語った。

電子ペーパーでは、2009年3月に一般販売を開始したFLEPiaが、今年9月末からコミック対応機能を強化。購読可能なタイトル数が発売時の2万タイトルから、17万タイトルに増加。さらに、台湾のプロ野球チームである兄弟象(ブラザーエレファント)の携帯情報端末として採用されることが決定。球団の情報誌などのデータを格納し、ファンに対して発売する計画だという。

RFIDでは、リネンやユニフォーム管理に活用するソフトリネンタグ、書類・媒体管理などに利用する書類管理用ラベルタグ、循環容器管理などに利用するカゴ車専用タグなどの差別化製品を投入。2009年4月から発売した新ソフトリネンタグは、従来品よりもさらに小型、軽量化を図っており、衣服に装着したまま洗濯やアイロンがけを可能としているのが特徴。現在、米国において大型商談を展開中だという。

手のひら静脈認証装置では、国内においては、山梨大学医学部附属病院で電子カルテシステムの認証用に導入。豊橋造船では2,000人の従業員を対象にした勤怠管理システムとして、福岡銀行でシステムセンターの入退室管理システムとしてそれぞれ導入。海外ではブラジルのBradesco銀行での導入や、全米700以上の病院と15万人以上の医師とのネットワークを持つAllscriptsとの連携による患者受付端末の開発などの大規模導入実績が出ている。

そのほか、2009年6月には、世界最大となる高さ16m、横72mという、大型映像システム「ドリームビジョン」を川崎競馬場の導入。現在、ギネスブックに申請中だという。

さらに、信販系ATMとして要望が高まっているATMによる返済処理を実現するために、硬貨リサイクルユニット付きタイプの高速コンパクトATMを開発中であり、2010年3月にも出荷する計画であることを示した。

電子ペーパー、RFIDなどの新規ビジネスの再編

今後の戦略