日本オラクルと日立製作所は10月26日、データベース環境設計や安定稼働の支援を含めた、データベースのシステムライフサイクルをサポートするサービス群の提供に向けて、両社で協業していくことを発表した。
両社はオラクルのデータベース・クラスタリング技術「Oracle Real Application Clusters (RAC)」と日立のブレードサーバ「BladeSymphony」を活用し、既存のサーバ環境の集約を実現するデータベース統合の検証を完了した。
これを受け、「日立-Oracle DB統合センター」をオラクルの「オラクル・グリッド・センター」内に同日付で開設する。同センターでは、検証で得られたノウハウを活用したデータベース統合に関するアセスメントや、移行における支援サービスが提供される。
日本オラクルで常務執行役員兼システム事業統括本部長を務める三澤智光氏は、「現在、サーバ統合が進むなか、データベースは取り残されてしまっている」と述べた。
「4台のデータベースを1台のサーバマシンに統合したとしても、4台のデータベースのインスタンスが残る。仮想化されたサーバで利用するとなると、コンフィグレーションも煩雑になり、データベースを運用管理する手間は変わらない。こうした事情から、データベースの統合が進まなかったと考えられる」
同氏は、「データベースの統合を実施するにあたって重要なのは論理層で仮想化を行い、プラットフォームの共通化を図ること」と指摘した。オラクルのRACを用いることで、論理層の仮想化まで実現されるという。
今回の協業がターゲットとして狙っているのは、今年から来年にかけて商談となりうる出荷してから5年を迎えるOracle Databaseを利用しているIAサーバである。「2009年から2010年にかけて、出荷5年を迎えるIAサーバは約6万台と言われている。IAサーバの多くがWindowsプラットフォームを搭載している。昨今の不況下で、システム全体を刷新する大型プロジェクトは少ないが、アップグレードの需要はあると見られる」
同氏はOracle DatabaseがWindows市場でシェアトップという市場調査を例に挙げ、同市場における同社の可能性をアピールした。
日立製作所でエンタープライズサーバ事業部事業部長を務める山本章雄氏は、「オラクルと日立は2006年にOracle GRID Centerを開設して以来、さまざまな活動を行ってきた。評価の成果として、11のホワイトペーパーを公開している。これまでの活動は、ハードウェアとOracle製品の最新機能の検証を行い、それを販売につなげるといった"技術先行型"だった。今回は顧客のニーズに基づいて機能の効果確認とノウハウの提供を行うという"顧客のニーズ解決型"の活動をしていく」と説明した。
今回の検証は、約5年前に構築したシステムを「BladeSymphony BS320」と「Oracle Database 11g」に集約して性能を検証するフェーズ1、古いデータベースからOracle RACの統合手順を確立するフェーズ2に分けて行われた。
検証の結果、PCサーバ24台で構成していたシステムを、処理性能は維持した状態で3枚のサーバブレードに統合することができた。24個の業務を統合したところで、適正とされるサーバのCPU使用率65%に達した。この環境ではRACと暗号化を用いていたが、そのオーバーヘッドが少ないこともわかったという。
両社は検証で得られたノウハウを基に各種サービスを提供していく。また、統合環境のハードウェア・Oracle Databaseの設計・構築を行うデータベース統合に関するテクニカル・サービスも検討されており、今年下期の提供が予定されている。
三澤氏は今回の提携について、「他のサーバベンダーとも提携を行っているが、今回は24台のサーバを3枚のサーバブレードに統合し、24業務を集約できるなど、統合の成果を検証できた点に意義があった。我々のデータベース統合はサーバの台数を減らすだけでなく、インスタンスも削減する。さらには、シングルプラットフォームになるとセキュリティレベルも上げることができるようになり、顧客に何重ものメリットをもたらす」と述べた。