ガートナー ジャパンは9月2日、東京都内で「ガートナー・ドキュメント・ソリューション・セミナー」を開催した。同セミナーは、プリンタ・複写機・MFP(複合機)といったハードウェアの市況と動向を見据え、世界経済の低迷の影響、コスト削減、注目される新興市場、新サービスなどについて解説するというもの。ここでは、「世界プリンティングの市場動向」をテーマとした主席アナリストの三谷智子氏による講演を紹介する。
三谷氏はまず、2009年のGDPと同様に、出力機器市場も新興地域の重要性が増していると説明した。国際通貨基金が7月に発表したデータによると、米国・ユーロ圏のGDPは前年と比べてマイナス成長が見込まれるのに対し、アフリカとアジアの新興国は前年と比べてプラス成長が見込まれる上、4月の見通しよりも上方修正が行われている。
出力機器市場について見てみると、2008年の出荷台数ではアジア太平洋地域・中南米・東欧/中東アフリカのシェアの合計が45%に上る。同社では、これら地域の台数シェアについて、2010年には48%、2013年には50%に増えると予測している。
なお、2008年のこの4地域の金額の合計は30%だが、これは新興国においては製品の価格が安いからだという。
同氏は、「市場全体で見ると昨秋の景気後退により急速に縮小しており、2009年はマイナス成長と予測されている。ただし、新興市場は2010年以降、ハードウェアの販売による成長が期待される」と、新興市場の成長性を強調した。
というのも、これまで出力機器はインクジェットプリンタ、ページプリンタ、MFPといった形で徐々に普及していったが、新興国ではこれらが同時進行で普及しており、ハードウェアの成長のスピードが速いからだ。
景気が底を打ったとは言われているものの、まだまだ企業を取り巻く環境は厳しく、企業にとってコスト削減は最重要課題である。同氏は、「プリンティング分野はコスト削減が目に見える分野であるため、市場にはさまざまな圧力が加わっている」と話す。
プリンティング市場には、次のような圧力が強まっているという。
- カラー印刷の制限
- 出力枚数の制限
- 出力機器の統合→所有台数の減少
- 紙ベースの業務から電子化へ移行
- アウトソーシング
- 買い控え・置き換えサイクルの長期化
同氏は、こうした状況だからこそ、プリンティング市場において成長が期待される新たなビジネスがあると説明。「これから期待される新たなビジネスは、プロダクション印刷を行う"クラウド・プリンティング・サービス"、印刷関連業務のアウトソースを行う"MPS(Managed Printing Service)"、企業の生産性向上・業務の効率化を図る"スマートMFP"の3つである」
同社の分析では現在、世界のMPSとスマートMFPは普及まであと2~5年かかり、また、日本のMPSとクラウド・プリンティング・サービスは普及までにあと5~10年かかるという。