アドベンチャーゲームやライトノベルなどのコンテンツを簡単に作れるツール「らのべえ」。前回のレビューでは簡単な機能紹介を行なったが、果たして実際の制作作業はどうやったらいいのだろうか? 製品版を使ってチェックしてみた。

実制作の作業工程はいかほどなのか。製品版でチェックしてみたい

ツールに収録された素材だけでライトノベルを作ってみる

「らのべえ」を起動すると、「シーンチャート」と呼ばれるメインウインドのなかに「プロジェクトの作成」や「プロジェクトを開く」などの選択肢が表示される。今回は新規にライトノベルを作成したいので、「プロジェクトの作成」を選んでみた。すると、プロジェクト名の入力とプロジェクトテンプレートの指定画面が表示される。テンプレートは選択しなくてもよいが、ここで選択しておくと「らのべえ」に収録されているイラストや音楽などが使用可能となる。このツールのウリのひとつでもある人気イラストレーターの「魚」や「蜜桃まむ」、「鈴井ナルミ」の絵素材を使いたいユーザーは、忘れずにテンプレートを選択しておくべきだ。

テンプレートは大きく分けて二種類存在する。「保護」と書かれているのはシナリオも読み込むもので、「素材」と書かれているのは絵だけ読み込む

テンプレートの読み込みには少々時間がかかる。大量のファイルを読むのでしばらく待っていよう

制作前に行なう準備はたったこれだけ。あとは自由にライトノベルを作成すればよい。画面上には「開始」や「title」、「scene001」などと書かれた四角いボックスが6つ配置されており、それらが線でつながれている。前回の記事でも紹介したが、これらのボックスは「ノード」と呼ばれ、それぞれのノードには物語のワンシーンが格納されている。そして、ボックス間を結ぶ矢印の線は物語の進行方向を示しており、作成中のストーリー進行が把握しやすいようになっている。紙と鉛筆で大作を書いているとゴチャゴチャでわかりにくくなりそうだが、「らのべえ」は視覚的に把握できる。作業がスムーズに進みそうだ。

ノードが「T字型」に並んでいる。各ノードはドラッグすると移動できる。作業中は見やすい位置に移動させよう

こちらは製品に収録されているサンプルシナリオのシーンチャート。物語は一直線でなく、選択肢を使った分岐もできる


さっそく作業開始!「ノード」の概念を理解してシーンを作成

準備が整ったところで、いよいよ本格的な作業を開始。「title」のノードに接続されているノード「scene001」は、ゲームタイトル画面の次に表示されるシーンを意味している。まずはここから制作してみよう。ノードの中をいじるには、ノードをダブルクリックするだけ。「scene001」のボックスをダブルクリックすると、作業ウインドーであるシーンチャートの背景が青から緑に変化し、ノードの内部の編集画面になる。

初期段階の「scene001」の中は、実にシンプル。「開始」と「シーン移動(scene002)」のふたつのノードが線でつながっているだけだ。これは、「scene001が開始されたら、なにもせずにscene002に移動します」ということを表している。要するに中身が入っていない状態だ。このシーンで画面になにかを表示させるには、ふたつのノードの間に絵や文字を表示させる命令を仕込めばよい。

「Scene001」をダブルクリックすると、この画面に切り替わってノードの中身を編集できる。画面右上の「UP」アイコンをクリックすると、元のシーンチャート画面に戻れる

作業画面上の空白エリアで右クリックをすると、「コマンド選択」ウインドーが表示され、7種類の命令を指示できる。今回は絵を表示させたいので、「画面を構成する」→「画面の表示」を選んでみた。すると、作業画面上に「表示(ERROR)」と書かれた新しいノードが現われた。エラーが出ている原因は、どこにも線でつながっていないから。このノードをすでに表示されている「開始」と「シーン移動」の間に入れて線で結ぶと、無事にエラーは解除される。線で結ぶ方法は、ノードからノードへドラッグ&ドロップするだけ。マウス操作だけでノードの接続ができるのは作業しやすい。

画面を右クリックし、画像を表示させるノードを新規に作成する

作られたノードを「開始」と「シーン移動」の間に挟む。こうすることによって、このシーンが始まったら絵が表示される

絵を表示させる箱(ノード)はできたので、今度はどのような絵を表示させるかを指定する。画面表示に関する制御は、メインウインドーとは別に起動する「レイアウトエディター」で行なう。このエディターは文字通りコンテンツの画面レイアウトを決めるツールだ。さらに、取り込む絵素材の管理は「CGビューワー」にて行なう。こちらも別のウインドーで起動し、「らのべえ」で使用可能な絵素材がサムネイルで表示される。「レイアウトエディター」と「CGビューワー」は頻繁に使用するため、「らのべえ」で作業を行なう際には常に表示させておく必要がありそうだ。

「レイアウトエディター」の画面。背景や登場人物など、絵素材を配置させるときに使用する

絵素材が格納されている「CGビューワー」。ウインドウの右側で絵の検索が可能

「らのべえ」はこのように3つのウインドウを表示させておくと作業しやすい


画面上に絵や文字を配置してみよう

「レイアウトエディター」と「CGビューワー」を起動したところで、「Scene001」内に作成した「表示」のノードに絵を設定する。設定の方法は簡単。「CGビューワー」から使いたい画像を選択し、「レイアウトエディター」にドラッグ&ドロップするだけだ。マウスで絵の配置を決定したら、「レイアウトエディター」の右上にある「GET」ボタンをドラッグし、ノードのボックス上にドロップ。これで表示させる絵の設定は完了。文章で説明すると多少ややこしく聞こえるかもしれないが、実際に操作してみると簡単。マウスだけで作業できるので誰でもすぐ慣れるはずだ。

見づらいが、レイアウトエディターの右上に小さく「GET」と書かれたボタンがある。これを「表示」ノード上にドラッグ&ドロップすると絵の設定は完了

絵の設定ができたら、次はテキストを表示させる。この場合は、絵の「表示」ノードと同じ要領で、今度はテキストを表示させるノードを新規に作成する。作業ウインドウ上で右クリックし、「新規コマンド作成」→「メッセージの表示や消去」→「メッセージを表示する」を選択。すると、画面上には「メッセージの一括入力」ウインドウが表示され、文字の入力が可能となる。

このウインドーは一見すると一般的なテキストエディターのようだが、「らのべえ」ならではの機能が備わっている。エディターで「F1」か「F2」キーを押すと、テキストに登場人物名を登録できるのだ。わざわざ文字の前に人物名を書く必要がないので、ユーザはセリフの執筆だけに専念できる。ライトノベルやアドベンチャーゲームを作りやすいように、よく考えられてたツールだ。

「F1」キーを押して「名前入力の候補」を選ぶと、登場人物を選べる。続けて入力するテキストが、選択した人物の発言というワケ


絵や文字を表示させたら消去することも忘れずに!

説明が長くなってしまったが、以上で「絵を表示させて文字を流す」というワンシーンの設定が終わった。これを繰り返せばライトノベルは作れる……ハズだったが、思わぬ落とし穴が!!

前述した要領で絵と文字を表示させる命令は出したが、「消去」の命令は行なっていない。このままでは画面上の文字はずっと表示され続けてしまうのだ。絵に合わせて文字も消えてくれないと、かっこよくシーンチェンジが行なえない。絵や文字を表示させたら、忘れないうちに消去させるノードも作成することをオススメする。

すべての設定が終わったら、プレビューしてチェックしてみよう。プレビューしたいノードを右クリックし、「デバッグ実行」を選択するとプレビュー可能。いつでも自由な箇所から行なえ、とても便利だ。

なにか意味があるのでなければ、表示させた文字は「消去」ノードで消しておく

作業がある程度進んだら「デバッグ実行」でプレビュー。シーンの頭から実行するか、ノードから実行するかを選択できる


多機能ツールだけど全機能は使わなくてもオーケー

「らのべえ」の機能はたくさんあるが、ここまでに紹介したことさえできれば、とりあえずコンテンツを形にすることはできる。より凝った表現をしたければ、絵の表示にエフェクトをかけたり、音楽や効果音を鳴らせたりすればいい。当然、一度作ったシーンは後から再編集可能なので、ツールの使い方に慣れてから手直しをすることだってできる。 もしも普段からアドベンチャーゲームをプレイする人ならば、好きなゲームのワンシーンを何度も見返してみるのもテクニック上達への近道かもしれない。プロのゲームクリエイターが作る技を参考にして、「らのべえ」でかっこいいライトノベルを作ってみよう。

次回は、「らのべえ」を使ってライトノベル以外のコンテンツを作る実験をしていく。