フランスの広告企業Publicis Groupe SAが米Microsoft傘下のRazorfish買収で合意したと、米Wall Street Journal (オンライン版)が8月9日(現地時間)付けの記事で関係者からの話として報じている。買収金額は5-6億ドル程度になるとみられ、同紙によれば9日中にも正式発表が行われる見込みという。

Razorfishは広告スペース買い付けや制作などを主業務とする広告代理店で、特にデジタル分野の知識や技術利用に優れていることで知られる。1999年にIPOを果たして上場企業となるものの、ドットコムバブル崩壊を受けて業績は低迷、2003年にSBI Groupによって買収される。その後同社はSBI.Razorfish、さらにAvenue A | Razorfishと名称を2度変更している。だがこの関係は長続きせず、2004年にSBIのRazorfish部門は米aQuantiveへと1億6,000万ドルで売却された。RazorfishがMicrosoft傘下に入ったのは、親会社にあたるaQuantiveがMicrosoftに2007年に買収されたことを受けてのもので、当時のMicrosoftはDoubleClick買収を成功させたGoogleへの対抗意識が強く、オンライン広告部門の強化を急いでいたことが背景にある。資本関係こそあるものの、Razorfishは独立採算企業としてaQuantive買収後も営業をそのまま続けており、社名からAvenue Aを外して現在に至っている。

一方の仏Publicisは世界でも最大手の広告代理店のひとつであり、数々の世界的企業をクライアントに抱えている。MicrosoftのRazorfish売却までの細かい経緯は不明だが、オンライン広告事業の拡張が済んだ後の事業整理の一環とみられる。売却の意向についてはすでに今年6月ごろから伝え広がっており、英WPPや米Omnicom GroupといったPublicisのライバルにあたる業界最大手のほか、日本からは電通がRazorfish争奪戦に参加していたとWSJでは報じている。Omnicomの買収提示額は5億ドルで、電通ではPublicisの提案を上回る金額を提示したとされるものの、最終的にはPublicisが競り落としたようだ。

またPublicisはRazorfishの買収だけでなく、Bingなどを含むMicrosoftのオンラインサービス事業での広告スペースの買い付け業務を今後数年間にわたって行っていく契約も同時に結んでいるという。2010年に登場が予定される広告付きの無料版Microsoft Officeなどと合わせ、Microsoftのオンライン事業にRazorfishやPublicisが深く入り込んでくる可能性がある。