オープン、高速、そしてわかりやすくあること - SAPの目指すBI

そうはいっても、すべての企業がSAP ERPのみを採用しているわけではない。SAPのBIプラットフォームが他のSAP製品との完全な統合を実現しているのは、既存のSAPユーザから見れば当然にも思える。SAPのもつもうひとつの強みは、「Oracle、IBM、Microsoftといった他ベンダが提供するシステムに対してもオープン性を維持している」(桐井氏)、すなわち、オープンな"L字型"ソリューションを堅持していることだという。

SAP BI"L字型"ソリューションは、企業内に存在するSAP以外のデータにも透過的なアクセスを提供する

「データの見せ方は非常に重要。見やすいダッシュボードは迅速な意思決定を助けることになる」と桐井氏。視覚化に定評があったBusinessObjectsのXeleciusを手にしたことで、SAPのBIポートフォリオは格段にリッチになった

SAPジャパンは今年6月、「SAP BusinessObjects Explorer」の提供を開始している。BIアプライアンスである「SAP Netweaver Business Warehouse Accelerator(BWA)」とBI向け検索モジュール「BusinessObjects PoleStar」を組み合わせた製品で、データをメモリ上に展開するインメモリ技術を採用しており、SAP/非SAPを問わず、企業内外に散在するあらゆるデータソースを対象に、一元管理の下、高速で検索をかけることができる。

高速性だけではなく、データの見せ方も重要なポイントだと桐井氏、塚本氏ともに言う。BusinessObjectsにはデータの視覚化を実現する「Xelecius 2008」や、レポーティングツール「Crystal Reports」などが揃っている。「データは当然、一元管理されている必要があるが、データの見せ方は、CEO、CIO、アナリスト、一般ユーザ…など、ユーザによって変える必要がある。BIとはSQL文がわからないユーザの理解を助けてあげるべきもの。現存するデータから、システムが最適なものを選び、見やすい状態でリコメンドする、これがBIの本来の役割」(塚本氏) - ユーザに適したビジュアルでデータを正確に見せること、それによる気づきを戦略に反映させ、実際に行動に移すこと…、桐井氏は「多くの企業ユーザが未だExcelをBI代わりに使っているが、Excelからこういった気づきを得ることはまず難しい」と断言する。

「Excelはビジネスに欠かせないツールだが、BIの代用にはならない。この状態から瞬時に戦略を立てるのはかなりむずかしい」(桐井氏)

変わりつつある日本のBI市場

最後に、ようやく本格化してきた国内のBI市場について、SAPジャパンはどう見ているのかを聞いてみた。桐井氏は、「あくまで私見」と前置きした上で「日本の企業ユーザは、"数字を見て分析する"という文化がまだ徹底しておらず、BIの考え方に慣れていないところが多分にある」とする。欧米では、小中学校の段階から、論理的な思考や数字をベースにした分析を徹底的に学習させられる。そこには標準としての"仕組み"が歴然と存在する。その仕組みの使いこなしが、「日本人はあまり得意ではなかったのでは」と分析する。

しかし、同氏は「日本もビジネスを取り巻くルールが変わりはじめている」とも言う。先が見えてこない不況の中、多くの日本企業がその商習慣を変える必要性に迫られた。ルールが変われば、ガバナンスも変わる。2年前まで、BIは単なるレポーティングツールと見なされることが多かった日本市場だが、今は確実に変わりはじめている。必要なのはデータではなく、データの分析から得られる正しい戦略と、それを迅速に実行に移す行動力 - 多くの日本企業が本当の意味で、それに気づきはじめている今だからこそ、BIの普及にふさわしい時期なのかもしれない。