経済産業省は5月26日から、未来型農業生産システム「植物工場」のモデル施設設置の第2弾として、「完全制御型植物工場」のモデル施設の公開を開始している。第1弾の「太陽光・人工光併用型」の植物工場とはどのような点で異なるのか? 今回、完全制御型植物工場のモデル施設を見学する機会を得たので、同施設の詳細をお届けしよう。

人工光だけを用いた植物工場

植物工場は用いる光源によって分類される。まず、太陽光を利用するか、人工光を用いるかで分類され、さらに人工光にもLEDや蛍光灯など種類がある。経済産業省が1月に公開した植物工場のモデル施設は、太陽光と人工光を用いた「併用型」だった。今回、公開された植物工場は人工光だけを用い、完全に密閉された空間の「完全制御型」である。

完全制御型は常に光源、温度・湿度などが管理されている状態になければならず、手間もかかれば、コストもかかる。しかし、閉ざされた空間であるため、農薬をまく必要がなくなる。消費者も農薬がついていないので、野菜を洗わずに食べることが可能になる。また、その特性を生かすことで、植物工場は品質管理を厳しく行わなければならない機能性作物の栽培に適していると言われている。今後、増えていくとされているのは、完全制御型植物工場である。

今回、モデル施設を請け負ったのはエスペック ミックだ。同社の中村謙治氏に話をうかがったが、モデルルームの設置にかかった費用は900万円だそうだ。

エアーシャワーで細菌・害虫をシャットアウト

それでは、経済産業省のモデル施設の植物工場について紹介しよう。

植物工場の内部構造、外観は以下に示したとおりだ。外に付けられた窓から内部をのぞくことができる。内部には、単段の栽培ベッドと多段の栽培ベッドがあり、それぞれ異なる人工光が装着されている。

経済産業省の植物工場のモデル施設の概要(左)と外観(右)

単段の栽培ベッドではミニトマト、ミディトマト、ラディッシュが、多段の栽培ベッドではイタリアンパセリ、バジル、レットケール、ラディッシュ、サラダナ、フリルレタス、サニーリーフが育てられている。

経済産業省の植物工場で育てられている野菜の一覧(左)、内部の様子(右)

まず、植物工場に入る際、入口にあるエアーシャワーボックスで殺菌する。エアーシャワーボックスでは清浄かつ高速な風が吹き出して、埃などが取り払われる。エアーシャワーボックスでの殺菌が終わったら、白衣に着替える。正に"工場"に入る時と同じスタイルである。

エアーシャワーボックスの内部(左)と植物工場に入る時の白衣スタイル