不況の中でも落ち込みを見せないIT投資とは

「100年に一度」という枕詞付きで語られる現在の経済不振だが、その影響で多くの企業がIT投資を凍結/削減しているかのようにも思える。しかし、この状況下でも投資が行われている分野もあるのだという。製造業界では、「製造原価低減」「在庫最適化」「調達コスト削減」「物流コスト最適化」の4つの分野では、IT投資は目立った落ち込みは見せておらず、企業によっては逆に投資が増えているところもあるほどだそうだ。これらは、不況脱出後の再成長を見据えた基盤投資であったり、あるいは中長期的な取り組みとして進行中のプロジェクトであることから投資削減が行われなかったりといった理由もあるようだが、いずれにしても、投資によってより多くの利益を確保し、コストを削減するためにITが役立つ分野だという点が共通している。

中でも、"作りすぎない"ための在庫最適化は製造業の利益確保のためには重要なテーマだという。Oracleがこの分野に向けたソリューションとして用意しているのが、2006年1月に買収が発表されたDemantraの製品だ。

"作りすぎ"の問題 - 大量生産でコストを抑えても過剰在庫がコストを圧迫する

今回お話を伺った、日本オラクル アプリケーション事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアディレクター 岡田行秀氏。「ファブレス化が進む中、直感に頼るような人力だけの在庫調整には限界がある。ITの力が欠かせない」という

製造業で利益を上げるためには、原価を下げること、余分な在庫を持たないこと、物流コストを削減すること…などが重要な留意点となる。とはいえ、いずれも簡単に実現できることではない。とくに余分な在庫を持たないために"作りすぎない"ようにするためには、さまざまな要素の最適なバランスを考える必要があるという。

量産効果による製造原価の低減を考えれば、少量生産をこまめに繰り返すよりも、まとまった量を一気に生産してしまう方が有利になる。一方、まとまった量を生産するということは、それが売れるまでの期間在庫として保管しておく必要が生じるため、そこに付随したコストが生じる。さらに、製造した分を売り切ることができればよいが、売れ残るようだと、場合によってはすでに売れた分の利益まで食い潰す赤字事業となってしまう可能性もある。損益の観点だけで見れば、売れ残りを抱えるよりは売り逃しの方がまだマシということにもなるが、これも難しい判断だ。追加の製造をいっさいしないのであればまだしも、需要に応えるために追加製造を行うとなれば、最初からまとめて大量生産したほうがコストが下げられたのに…という事態にもなる。

日本オラクル アプリケーション事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアディレクターの岡田行秀氏は、「日本の製造業ではまだ作りすぎて大量在庫を抱える企業が多いが、欧米では在庫を抱えるよりは欠品の方をよしとする企業が多い」と語る。これには、「お客様の期待に応えてこそ」といった商道徳の存在も影響していると思われ、簡単に割り切れる話でもないのだが、「モノが売れない時代」と言われる昨今、相変わらずの作りすぎで大量在庫を抱えているようでは収益改善は望めないだろう。顧客が望むときに望むだけの製品が入手できるよう、潤沢に供給することも大切だろうが、そのせいで利益が圧迫されたり赤字になったりしているようでは事業継続が怪しくなり、結局は顧客にとっても不利益につながるハズだ。