ロンドンからテレプレゼンスで発表を行った、アクセンチュア パブリック・サービス・バリュー・インスティチュート 所長のグレッグ・パーストン氏

アクセンチュアは7月7日、同社が昨年9月に実施した「グローバル・シティ・フォーラム 東京」で得られた、公共サービスに対する意識調査結果を発表した。

グローバル・シティ・フォーラムは、各国の公共サービスに対する意見を市民にディスカッションしてもらうイベント。参加者は、各国の人口構成比に従うかたちで、高齢者から20歳前後まで、さまざまな立場の男女が集められ、「市民」、「納税者」、「サービス利用者」という3つの立場で評価を行う。2007年よりアクセンチュアが世界各国で実施しており、パリ、マドリード、シンガポール、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、ベルリン、シドニーなど、13都市で開催実績がある。

その東京開催となる「グローバル・シティ・フォーラム 東京」は、東京都港区の東京ミッドタウンにて行われ、東京在住者49名が参加。「市民生活改善における行政の役割」、「3つの視点(納税者、市民、利用者)から人々が行政に求めていること」、「特定の問題の深堀」、「将来の行政運営 - 2013年に世界はどうなっているのか?」、「グローバル問題への対応」という5つのセッションが用意され、意見交換が行われた。

参加者の主な評価結果は以下のとおり。

住み働くところとしての都市の評価

住み働くところとしての評価は、半数以上の参加者が「とても良い」と評価したが、「世界のトップレベルの都市である」と評価した参加者は8%に留まった。

ちなみに、シドニーでは50%程度、ニューヨークでは30%程度の参加者が「世界のトップレベルの都市である」と評価している。

医療・健康に関するサービスの評価

グローバル・シティ・フォーラム 東京の結果を発表した、アクセンチュア 戦略グループ パートナーの吉竹正樹氏

医療/健康に関しては、参加者の約3/4が「期待に応えていない」と回答した。東京が抱える問題として挙げられた項目のトップが医療であり、今後高齢化が進むと現在の医療体制で対応できなくなるのではないか、という不安が多かったという。なお、医療を問題視する傾向はどの都市にも共通で、シンガポールを除くすべてで過半数が不満と回答している。

参加者の要望としては、「医療費は、病気を治療するのではなく、予防することで減らすことができる」、「行政機関は医師の数を増やす必要がある。医師不足は患者のたらい回しと質の低い治療につながる」といった声が挙がったという。

治安に対する評価

参加者が挙げた東京の問題のうち、2番目に多かったのが「治安」だ。実に、参加者の2/3が東京の治安は期待を下回ると回答。この数字は13都市の中で4番目に悪い結果となっている。

改善に向け最も重視されたのは、「市民に自らのコミュニティの治安を守る権限を与えること」。コミュニティに社会的絆が生まれることが安全な環境を守るのに役立つ、という意見が強かったという。

ディスカッションから導きだされた5つの提言

グローバル・シティ・フォーラム東京でのディスカッションにより、東京の公共サービス改善に向けた指針として、次の5項目が導きだされたという。

  • 透明性と説明責任 : 税金の使途を市民が精査できるよう、計画や運営方法、成果について、より多くの情報を提供する義務がある。そのためには「税金が増えても構わない」という声も
  • 長期的な見通し : 最善の長期的成果を実現するための明確なビジョンを定め、対策や政策がどのように貢献するのか、詳細な説明を行う必要がある
  • 効率性とコストパフォーマンス : 公的資金の使用に際し、説明責任を高め、市民の意見を反映させるような政策決定プロセスが必要。また、小さな組織単位ではなく、幅広い視点からサービスを提供する必要がある
  • 公正性と公平性 : 各人の状況に関わらず、誰もが生活の質を改善できる機会を持てるようなサービスを提供する必要がある。また、公平な成果のためには、サービス利用に不均衡が生じても仕方がない
  • 顧客志向と柔軟性 : 人々が利用できるサービスについて、より適切な情報を得られるように、サポート体制を確立する必要がある

そのほか、アクセンチュアでは、グローバル化が進む中、各国政府に突きつけられている課題も整理。具体的な項目として、「国内の人材育成」、「人材と資本の流動的な管理」、「社会インフラの強化」、「国家安全保障の確保」、「持続可能な環境の保証」の5つが挙げられ、今後は、国際的な組織/分野の枠組みを超えて各国政府が互いに協力する必要がある、などの見解も示された。

発表会の模様