いよいよ『Imagine Cup 2009』が開幕する。マイクロソフトが主催する学生向けITコンテンストの第7回開催の地はエジプト・カイロ。124カ国から約440名の学生が集い、7月3日(現地時間)から6日間、9部門に分かれて国連ミレニアムが掲げる課題に対するソリューションを競い合う。日本からは3部門に出場。同志社大学のチームNISLab++が「ソフトウェアデザイン部門」に2年連続で出場するほか、「組み込み開発部門」と「写真部門」の両部門は日本からは初出場となり、国立東京工業高等専門学校(東京高専)のチームCLFSと武蔵野美術大学の寺田志織さんがチャレンジする。

Imagine Cup 2009 エジプト大会は7月3日から開催される

大会テーマは「テクノロジを活用して、世界の社会問題を解決しよう」。学生たちは、下記の「国連ミレニアムの開発目標」から取り組む課題を選択し、ITによる問題解決の提案を行なう。また、写真やショートフィルムを利用してテーマについて訴えかけるというアート的手法を用いる部門も用意されている。

■国連ミレニアムの開発目標

  • 極度の貧困と飢餓の撲滅
  • 普遍的な初等教育の達成
  • ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
  • 幼児死亡率の引き下げ
  • 妊産婦の健康状態の改善
  • HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止
  • 環境の持続可能性の確保
  • 開発のためのグローバル・パートナーシップ

ソフトウェアデザイン部門に出場するNISLab++

2年連続で日本予選を突破し、世界大会出場を決めたNISLab++は、「普遍的な初等教育の達成」を実現するソリューション「PolyBooks」を提案。インターネット上の教育コンテンツを利用した電子教科書プラットフォームを構築することで、開発途上国における教科書不足問題などを解消する。1次ラウンドで敗退した前回大会の反省をいかし、コンセプト作りから徹底した議論を繰り返してきたという。7月1日現在、Imagine Cup 2009の一般投票ページではPolyBooksがトップの支持を得ている。世界大会では厳しい審査員からも同様の支持が得られるだろうか。

組み込み開発部門に出場するCLFS

東京高専のCLFSが挑戦する組み込み開発部門は、地域ごとの予選は行なわれない。世界予選上位20位までが世界大会へ歩を進めることができる。同部門への日本からの出場はCLFSが初となり、高専チームが出場するのも初。大きな注目を集めるCLFSは、「The Electronic Maternal and Child Health Handbook」を考案した。母子の健康状態を記録する「母子手帳」という日本ならではの仕組みをもとにした健康管理システムによって、「幼児死亡率の引き下げ」の実現を目指す。

写真部門に出場する寺田志織さん

武蔵野美術大学3年の寺田志織さんは、写真(フォトストーリー)部門に出場する。この部門も地域予選は無く、世界予選上位わずか6名のみがファイナリストに残ることができる。「ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上」をテーマとした写真作品「remainder」を制作し、女性の社会進出における男女格差の現状を表現した。世界大会のコンペティションでは、現地で新たに写真を撮影し、ストーリーを織り上げる。大会ブログでは不安を覗かせながらも「自信を持って臨みたい」と語っているように、前向きな姿勢が実を結ぶよう期待したい。

Imagine Cupを通じて貴重な経験を

7月1日に東京都内のマイクロソフト社内で行なわれた壮行会では、世界大会参加チームによる本番同様のプレゼンも披露された。短期間でブラッシュアップされたNISLab++やCLFSのプレゼンに、関係者からは期待の声が多く聞かれた。また、これからエジプトへ発つ学生に向けて、加治佐俊一 マイクロソフト最高技術責任者(CTO)は「若いときに刺激を受けることは重要」とImagine Cupの意義について訴えた。大会の中で刺激を受け、そこから学んでいくことが今後の飛躍につながっていくと話す。過去の大会経験者でエジプト大会では審査員も務める中山浩太郎 東京大学 知の構造化センター 特任助教からは、「勝ち負け以上に大事なのは、高いモチベーション、高い技術を持つ学生と交流することで得られる経験」。大会を通じて貴重な経験を獲得してほしいとエールを送った。

世界大会出場者は7月2日に日本を発ち、エジプトへ向かう。

■世界大会出場者

参加チーム 参加部門
NISLab++ 中島申詞(同志社大学大学院)、加藤宏樹(同)、前山晋哉(同志社大学)、門脇恒平(京都大学大学院) ソフトウェアデザイン部門
CLFS 佐藤昌典(国立東京工業高等専門学校)、長田学(同)、宮内龍之介(同)、有賀雄基(同) 組み込み開発部門
寺田志織(武蔵野美術大学) 写真(フォトストーリー)部門