情報通信総合研究所は、「ICT関連経済指標」を用いた2009年第1四半期から直近にかけてのICT(情報通信)経済の動向と、今後の展望を発表した。

それによれば、2009年1-3月期のIC 経済は、期後半にかけて生産や設備投資(官公需)、輸出の減少に底打ち感が出始め、中国などのアジアを中心とした外需の回復や国内の追加経済対策による景気押し上げ効果が徐々に顕在化しているが、設備投資(民需)やサービス部門は依然として低迷しているなど、不安定要因も残されており、今後、ICT経済が日本経済の回復に向けての起爆剤となれるかが注目されるとしている。

ICT 関連生産、ICT 関連サービスの前年比の推移(月次)(出典:情報通信総合研究所)

今後の展望については、次の6つのポイントを挙げている。

・ICT関連生産は、在庫調整に伴い下げ止まりから反転傾向にある。今後、生産活動の本格回復につながるかが注目される。
・ICT関連生産指数の絶対水準は極めて低く(2009年第1四半期の水準はITバブル崩壊直後の最低水準並み)、サービス、設備投資、消費は盛り上がっていない。先行指標となる半導体製造装置の機械受注の大幅減少が続いていることや、これまで好調であったICT関連サービスの低迷、消費の弱含みが懸念される。
・ICT関連輸出の回復については、海外の経済対策、特に中国の内需刺激策により電子部品の生産や輸出に一部改善の兆しがある。
・今後は国内の追加経済対策の効果が、エコポイント制度によるデジタル家電(最終製品)や電子部品など関連部品需要や、スクール・ニューディールによる官公需のパソコン需要増加などの生産面で期待できる。ただし、消費を中心とした需要の喚起が一時的なものに留まるのか、あるいは持続的な回復につながるものなのかについては、今後の動向を注視する必要がある。
・企業の設備投資は売上高の減少に伴うコスト削減圧力により低迷しており、ソフトウェア受注を中心に新規需要は見込みにくい。今後しばらくはコスト削減圧力が続くことが想定され、ソフトウェア開発のオフショア・アウトソーシングの進展によるSI業界の雇用機会減少なども懸念される。
・賞与の減少など家計所得がさらに悪化する中で、巣籠り消費などコスト節約志向から利用が伸びてきたICT関連財、サービスへの消費が今後も堅調に推移し続けられるのか注目される。