今年より改正省エネ法の一部施行がスタートしているが、CO2の排出削減など省エネ対策は、企業にとって避けられない課題となっている。その一方、昨年から続く景気後退により、コスト削減を余儀なくされている企業も少なくない。そうしたなか、企業内のPCのムダな消費電力をカットできれば、当然、その分のコストを削減できるはず。本誌では、富士通のミドルウェア事業本部 システムマネジメント・ミドルウェア事業部長の大西真吾氏と同事業部第三開発部部長の村井透氏に、どうすれば企業がPCの省電力化を徹底してコスト削減を図ることができるかについて話を聞いた。
離席中、昼休み、夜間などに動き続けるPC
企業では、業務を遂行する上でPCはなくてはならないものであり、"1人1台"というPCの利用状況が当たり前となっている。大西氏は、「クライアントPCの管理は現場任せになってしまっている企業が少なくない。その場合、どの部署にどのようなPCがどのくらいあるのかを正確に把握することが難しくなっており、資産台帳を作っていたとしても、現状と合わなくなっている」と、企業のPC管理における課題を指摘する。
PCの所在が管理できてないということは、その使われ方も企業であらかじめポリシーから外れている可能性が高い。企業で利用するPCはセキュリティやコンプライアンスなどのリスクから保護するため、ポリシーに従って運用管理される必要がある。よって、ポリシーに従っていないPCがあるということは、その企業がリスクにさらされてるということになる。また、コスト削減という観点から、企業内のPCの電源管理を行うことも不可欠と言えよう。
同氏は、さらにPCの設定が所有者に依存していることも問題だと語る。なぜなら、PCの利用上のポリシーが決まっていて、それを適用した状態でPCを社員に配布したとしても、社員がPCの管理者権限を持っていれば設定を変えることができてしまうからだ。
例えば、毎日1回ビジネスタイムにウイルス対策ソフトがスキャンを行うというポリシーを適用しているとしよう。しかし、ウイルススキャンが始まるとPCの動作が重くなるからといって、自分が帰社してPCを使わなくなった時間に実施するように変更してしまう人もいる。
この場合、業務外の時間にもPCの電力が消費されることになるわけだ。また、外部から社内のPCにアクセスするため、PCのデータのバックアップをとるためといった理由で、夜間も電源を入れたままのPCがあるという。
そのほか、離席中もスクリーンセーバーが動作していたり、休憩時間も電源が入りっぱなしといったケースも、PCにおける電力消費のムダの代表例である。
社内では省電力設定の変更で電力削減を実現
そもそも、PCの省電力化によって、どの程度の消費電力を減らすことができるのだろうか?
村井氏は、「当社製のデスクトップPCを例にとると、通常稼働中は約300W(LCD含む)、スタンバイ状態は約1.9W、休止状態は約0.9Wの電力を消費している。稼働時と省電力設定時では消費電力が2ケタ違うというわけだ」と語る。これが台数分積み重なったら、結構な電力量となる。
富士通は、従来PCの資産管理・セキュリティ対策ソフトとして提供してきた製品に省電力対策機能を追加した「Systemwalker Desktop Patrol」を提供している。同社では今年5月にリリースした最新版「Systemwalker Desktop Patrol V14g」を用いて、開発拠点の300台のPCを対象に省電力の効果を測定してみたそうだ。
スタンバイモードへの移行時間を通常の業務時間は10分、昼休みは5分と設定したところ、昼食時(1時間/日)に55分の電力削減、会議時(2時間/日)に110分の電力削減、朝礼・休憩時に(1時間/日)40分の電力削減が実現され、省電力を設定する前と比べて約40%の電力を削減できたという。PCの省電力を徹底できれば、その分の電気代とCO2の排出量を抑えることができるというわけだ。