Linuxの技術認定機関である特定非営利活動法人LPI-Japanは、Linuxサーバ構築のための教科書「Linuxサーバー構築標準教科書」を、6月22日から無償で提供する。

「Linuxサーバー構築標準教科書」を持つLPI-Japanの成井弦理事長

同教科書は、LPI-Japanが実施しているLinux技術者認定試験(LPIC)のレベル2の201試験、および202試験の出題範囲に含まれるLinuxサーバ構築の知識を、実習を通して体系的に学習することができるもの。Linuxサーバを構築した環境において、実際にWebにアクセスし、メールを送受信することで、Linuxサーバの動作原理のプロトコルの仕組みを理解することができる。OSにはCent OS バージョン5.2を使用する。

教材は、講師1人と受講生2人以上が存在する環境での利用を前提としており、想定実習時間は6時間の2回講座の全12時間。高校/大学/専門学校などでは90分の授業を8回で完了する形で想定している。座学および実習形式での利用に最適化した構成だという。

テキストは、

  • Linuxのインストール準備と事前学習をする
  • Linuxのインストールと設定を行う
  • ネットワークの設定と確認を行う
  • DNSサーバーのインストールを行う
  • Webサーバーのインストールを行う
  • メールサーバーのインストールを行う

で構成される。例題はいっさい掲載されていないことから、副教材として位置づけており、一般に市販されている教材を補完するものになるとしている。

電子データのテキストは、LPI-Japanのサイトで公開する。また、冊子として実費でも提供する。価格は未定だが、1冊1,000円以下で提供できる予定だという。

LPI-Japanでは、昨年9月からLinuxに初めて接する人などを対象にした「Linux標準教科書」を発行しており、これまでに3万421件のダウンロードがあったという。大学などの教育機関からのダウンロード数は3,949件となっており、ダウンロード数が多い大学は、東京大学、筑波大学、京都大学、東京工業大学、慶應義塾大学の順となっている。

昨年9月から配布されたLinux標準教科書の利用状況

「企業では、以前はNECや富士通といった大手ITベンダが中心となっていたが、一般企業などにも広がっている。東京証券取引所でも次世代システムの導入に関して、Linuxを学習したいという要望があり、Linux標準教科書をダウンロードした実績があった。ほとんどの金融機関がなんかしらの形でLinuxを導入していることや、アンドロイド携帯電話などにもLinuxが広がっていることから、今後は、さらに幅広いユーザーからも注目を集めることになるだろう。女性の利用も12%程度に広がっており、もっと女性にもLinuxを知っていただきたい」(LPI-Japanの成井弦理事長)とした。

また、「今回のLinuxサーバー構築標準教科書は、LPICの受験者を増やすことよりも、オープンソースそのものに触れていただく機会を増やし、理解を広げるためのものにしたい。オープンソースは、自分で貢献していく動きが中心となることが必要であり、日本の技術者が能動的に動く土壌を作りたい」などとした。

なお、LPICの日本国内での総受験者数は12万人を超え、日本におけるレベル1の認定者は3万1,000人、レベル2が8,200人、レベル3が1,100人と、合計で4万人を突破した。ベンダ系の認定試験制度を含めると、情報処理認定試験、マイクロソフトの認定試験、オラクルの認定試験に次いで多い規模になるという。

LPICは世界規模で行われているが、レベル1の認定者のうち約6割が日本。また、レベル2では7割、レベル3では9割が、それぞれ日本からの認定者となっている。そのため、Linux標準教科書は、日本で作られた教科書が先行しており、これを青年海外協力隊の隊員が英訳して公開するといったような動きも出ている。