ADCの基礎概念を生み出した
「アプリケーション配信装置(Application Delivery Controllers)」の基礎概念を生み出し、創成期から市場を牽引し続けているベンダーがF5だ。同社はL4レベルのロードバランサが全盛だった時代に、Cookie、IPアドレス、ブラウザ種別など、L7レベルの情報を分析して高度な振り分けを実現。
携帯端末の識別番号まで参照していた同社製品は、当時「iモードに対応したトラフィック振り分けができる唯一のスイッチ」という存在であり、携帯電話によるインターネット利用の拡大に合わせて採用実績を大きく伸ばした。
プロキシ型でアプリ配信を最適化
その同社にとって大きな転機となったのが、2004年の「BIG-IP v9」リリースである。
それまでのユーザーは「何よりも止まらないことを重視していた」が、業務アプリケーションのWeb化が進むにつれ、セキュリティやパフォーマンスといった要件も重要視されるようになる。同社はそんなニーズに応えるように、BIG-IP v9を「アプリケーションフルプロキシ」型のスイッチとして開発した。
アプリケーションフルプロキシ型にしたことで、従来はセッション確立時だけにしか行えなったパケット解析/サーバ振り分け処理を、セッション継続中に随時実行できるようになった。また、アプリケーションデータや戻りパケットの解析も可能なため、「例えば、数分おきのヘルスチェックではわからない"発生したばかりのサーバダウン"などにも対応可能」だという。さらに、2009年4月には「BIG-IP v10」を発表。
アプリケーショントラフィック管理、Webアプリケーションファイアウォール、Webアクセラレータを1つの筐体上でシームレスに統合できるようになったほか、重複したIPアドレスの利用などを可能にする「ネットワーク仮想化」機能なども搭載された。また、導入作業やシステム監視/管理の手間を減らす機能拡張も行われており、アプリケーション配信装置としての完成度を高めている。
製品ラインナップ
BIG-IP Local Traffic Manager1500/1600/3400/3600/6400/6800/6900/8400/8800/8900/VIPRION
『出典:システム開発ジャーナル Vol.10(2009年6月発刊)』
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