Intelの日本法人であるインテルは、Intelが同社のIT部門の1年間の取り組みを紹介するPerformance Report(2008年版)を発行したことを受け、IntelのIT部門の現状説明を行った。

インテル 情報システム部 部長(IT@Intel担当)の海老澤正男氏

IntelのIT部門が重視しているのは、「なによりも無駄の省略。特に顧客と関わらない部分のコスト削減を実施することで、ユーザーに対してより高性能の製品を提供することに注力する」(インテル 情報システム部 部長(IT@Intel担当)の海老澤正男氏)ことであり、そのためのビジョン「Intel IT部門の人材とソリューションにより、Intelの成長とビジネスの変革を実現する」を掲げている。

また、IT部門の役割については、「競争力のあるI+Tを提供する」こととしている。IとTを分離している理由について海老澤氏は、「Technologyについては、Intelに入るくらいなので、みんな好きな部分だが、それに比べるとInformationについてはややおろそかな部分」としており、両者を釣り合わせることで、よりよい情報とテクノロジーの提供により意思決定、効果、効率を改善し、ビジネスの成長と革新を実現するという意味を持たせている。

Intel IT部門が2008年に掲げたビジョンとミッション

ちなみに、2007年の役割は、「Intelの継続的な成長に必要なIT機能の提供」であり、ビジョンは「ITの能力が競争力の中核を担う」であった。

データセンターを集約

同社のIT部門の社員数は2008年末で5,700名。これは、2006年、2007年と徐々に減少してきていたが、一部の地域で契約社員を正社員に引き上げたことから前年比で若干の増加となっている。また、拠点数は28カ国で66拠点で、これで全社員8万3,500名(150拠点、61の国と地域)のサポートを行っている。

Intel IT部門の概要と2008年実績

しかし、データセンター数は削減されている。2006年末で136カ所、2007年10月頃にこれが117カ所に減り、同年末にはさらに95カ所まで削減。2008年末にはこれが75カ所まで削減されている。内訳としては、グローバルが5カ所、リージョナルが14カ所、ローカルが56カ所となっており、この内「リージョナルとローカルはさらに削減する方向で検討が進んでいる」(同)とする。ただし、物理的なサーバ数は増加しており、すでに10万台程度に達し、全社員数を超す規模にまで増えているという。なお、オレゴンとニューメキシコにあるデータセンターが2大拠点となっており、大半のサーバがそこに集約されているという。

同社のサーバへの考え方は、単に新旧取り混ぜて台数を増やせば良い、というものではなく、IT部門の戦略目標の1つである「オペレーションエクセレンス」の一環として、先進IT技術の導入を推進している。「サーバは使える限り使うという考え方から、CPUのパフォーマンス、低消費電力化の進展により、長く使うよりも新しいものを入れたほうがコストメリットを出せるようになった」(同)ということであり、サーバの更新サイクルを4年に設定、それより長い期間使用したサーバについては、2008年中に更新を行い、2万台のXeon搭載サーバに統合したとしており、「これで4,500万ドルの削減効果を得た」(同)とする。

最新IT機器の導入により運用業務を効率化

また、サーバの使用効率の向上に向けた取り組みを進めることで、設計などを担うIT部門以外の各事業部合算で9,500万ドルのコスト削減効果が見込めるとしており、結果としてデータセンターの消費電力は1日あたり3万4,689kWとなり、前年比5%の効率向上となったという。同社としては、2009年はこれを10%削減まで進展させる予定としている。

業務効率向上に向けた各種の手法

効率化/コスト削減という意味では、データセンターにおける冷却にエアコンを使用せず、外気を用いて冷却する方法を検証している最中であり、外気が摂氏32℃を超える際にのみ冷房を使用することで、10MW級のデータセンターで287万ドルの削減効果が見込めるという。ただし、「湿度や気温差などの違いがあるため、日本でそのまま適用できるかどうかは実験の結果次第」(同)とのことである。

外気を利用してデータセンターを冷却する「エア・エコノマイザ」実証実験をニューメキシコの施設にて行っている

このほか、SSDのデータセンターのストレージへの導入およびセールスマーケティング社員のPCへの導入を進めることにより、消費電力の低減、所要空間の削減、読み取り性能向上などのメリットが生み出されており、「日本もセールス部隊の100台のPCで実験中だが、今後も積極的な支援を行っていきたい」(同)とするほか、WiMAXの基地局を東京オフィスの中に設置、セールススタッフにデータ通信カードを配布するなど、業務効率の向上に向けた取り組みが行われている。

データセンターのストレージおよびスタッフのPCへのSSDの導入を開始

そのほかのコスト削減、生産性向上に向けた取り組み

Intel vProの社内導入計画(同社では2~4年でリプレースされ、リプレース後のPCに自動的にvProが導入される)

vProの導入状況と将来のコスト削減見込み

なお、2009年の同社IT部門の戦略目標は、2008年の「人材」「オペレーショナル・エクセレンス」「ビジネス・ソリューション」の3つに加え、Intelのビジネスが半導体製品の販売のみならず、IT全体のソリューションプロバイダ的なものに変化してきていることから、製品開発に影響を与え、Intelのテクノロジーの価値を示すための「業界への影響」という項目が追加されている。

2009年のIntel IT部門の戦略目標