「ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2009(主催 ガートナー ジャパン)」初日のジェネラル・セッションは、「仮想化:将来へ向けたシナリオ」と題し、ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 最上級アナリストのカール・クランチ氏が講演、仮想化が、さまざまな局面にもたらす巨大な変化について解説した。
かつて、ITシステムはその発展に伴い無秩序な状態を発生させてきた。ここに仮想化技術が適用され、サーバなどマシンの使用率が向上するなど、効率化で成果を上げている。その結果、いわゆる「仮想マシン」の浸透度が、今後急上昇していくという。「仮想マシン」の導入率は、2007年には7%に留まっていたが、右肩上がり傾向が継続し、2013年には61%にまで達すると、ガートナーは予測している。
「仮想マシン」の普及・拡大は、サーバの状況に大きな影響を与える。ユーザーはより大規模なサーバを使用することができるようになるとともに、ワークロードに拘束されることなく、サーバの共有化がさらに進むという。
同社では、2008年に導入、あるいは再導入されたx86ワークロードの1/4は、「仮想マシン」にインストールされているとみており、2012年までに、x86サーバのワークロードの大半が「仮想マシン」内で実行されると予測する。クランチ氏は「仮想化は、サーバ・アーキテクチャーを変化させる」と強調した。
クライアントの柔軟性もたらす「バブル」とは?
無論、クライアント側も変わるのはいうまでもない。これまでは一般にクライアントは、標準的なパソコンを基本に、企業がそれらを所有していた。しかし、新時代のクライアントは、いわば端末を選ばない。エンドユーザーのデータ、アプリケーション、パソコンなどの諸設定を「バブル」呼ばれる仮想マシンが包括する。「『バブル』はさまざまなハードに飛んでいくことができる。企業内のパソコン、家庭内のマシン、出張中のモバイルノート、どこでもかまわない」(クランチ氏)という。
クランチ氏は「古くから企業内では、IT部門とパソコンユーザーの間に『戦い』があった。IT部門は高品質の環境を構築しようとするが、エンドユーザーはそれぞれの独自性に流れがちで、ここにせめぎ合いがあった。だが、『バブル』を用いれば、このような問題は解決する。一つのパソコンで、二つの仮想マシンを稼動させ、一方は企業側の設定、もう一つの方で、独自設定ができる」と語り、「バブル」の効用を説いた。