日本ヒューレット・パッカード 取締役 常務執行役員 テクノロジーソリューション営業統括 古森茂幹氏

「お客様がいまIT投資に期待していることは、コスト削減以外にない」- 日本ヒューレット・パッカード 取締役 常務執行役員 テクノロジーソリューション営業統括 古森茂幹氏はこう言い切る。リーマンショック以来、日を追って厳しくなる景気の影響は、ここ数年好調な業績を上げ続けてきたHewlett-Packardにも容赦なく襲いかかっている。2月18日にHPが発表した2009年度最初の四半期決算、同社は久々に純利益マイナス13%という数字を記録した。唯一好調だったサービス部門を除き、PC/プリンタ、サーバ、ソフトウェアといった部門は軒並み売上減少となっている。

こういった状況にあっては、いくら顧客に「攻めのIT投資」を訴えかけてもそのメッセージは届きにくい。そこで日本HPが取った戦略は、企業ITの「劇的なコスト削減を実現する」というものだ。そしてその戦略の要として、既存のUNIXサーバから同社の「HP Integrity」サーバへの移行を、"全社を挙げて"推進していくことを掲げている。そしてこの戦略による効果をずばり「ITコストの30%削減」と断言している。

2月24日、日本HPは2009年の「HP Integrityサーバ事業戦略」を発表した。IA64サーバであるIntegrityは「ミッションクリティカルな用途に向き、かつ非常に信頼性の高いサーバ」(同社エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 BCSビジネス本部 本部長 上原宏氏)として、同社のUNIXサーバ戦略の要となっている。「現在、お客様はIT予算の"透明化"と"削減"に最も関心をもっている。そしてIT予算の透明化を図れば、予算の"最適化"も見えてくる。透明化と最適化を実現するには、企業に散在するマルチベンダ環境を統合し、メインフレーム上のレガシーをオープン化することが必要だ。HP Integrityはそのベストソリューション」と上原氏は語る。

日本ヒューレット・パッカード エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 BCSビジネス本部 本部長 上原宏氏

これまで、企業はマルチベンダ環境の統合について、その重要性は理解しながらも、実際にはあまり推進してこなかった。理由は"1つのベンダにロックインされる=リスクが高まる"という拒否反応からだ。だが、出口が見えない景気低迷の中では、「そんな悠長なことを言う余裕もないほど、コスト削減に迫られているのが実情」(上原氏)だという。これに追随して、ベンダ統合による統合のメリットへの関心が高まってきている。

HP Integrityによるサーバ統合のメリットについて、上原氏は「一元管理のしやすさ」を挙げる。これまでUNIXサーバとx86サーバの混在環境では、その一元管理が難しいとされていたが、「ブレードサーバのHP BladeSystemとの統合は簡単。また、仮想サーバを含めた統合管理を可能にする"HP Insight Dynamics VSE"などのソフトウェアも整ってきており、堅牢なシステムを低コストで運用するシステムがHPソリューションによって実現可能になっている」と自信を見せる。また、メインフレームによる統合と比べても「システムのブラックボックス化を回避でき、IT管理者は可視化された状態で管理することが可能になる」とその透明性を強調する。

具体的な戦略としては、

  1. 提案力の強化…HP Integrityの拡販を加速する全社体制を新たに確立、専門性の高い部門がチームとなって顧客の要望に応える体制をつくる
  2. 他社UNIXサーバ/メインフレームからの移行推進…Solaris/AIX/メインフレームユーザに対する60名規模の移行推進チームを結成、、SolarisからHP Integrityへの移行相談窓口"Solaris Migration Center"を市ヶ谷本社に設置、Solaris/AIXからのアプリケーション移行サービス"HP-UXプラットフォームへの移行支援サービス"の立ち上げ
  3. 顧客・パートナー満足度のさらなる向上…HP-UXコミュニティの形成、販売パートナー支援の強化

を推進していく。「ITコスト30%削減」という明確な数値を旗印に、専門チームを擁して他社UNIXサーバからのシェア奪回を図る。