もっとも、永井氏によると、内部統制への対応状況に差がでる根本的な要因としては、これまでの"統制"への取り組みの有無と、J-SOX対応にかかわる経営陣の姿勢という2つの要素が大きく関係しているという。

「たとえば、東証1・2部に上場する企業の場合、東証による実質審査に備えて、上場準備の過程で、業務プロセスの把握や内部監査体制の枠組みづくりが進むことが多く、それらをベースにすることで内部統制への対応を行いやすいという事情がある。また、J-SOX対応に当たって、経営陣が積極的な姿勢を持っていれば、トップから業務部門に働きかけることで、業務部門からの協力も得やすくなる」

逆に言えば、上場の際に厳しい審査が求められることがなかったり、上場してからも経営陣が組織経営に力を注がなかったりした場合、内部統制の対応が進まないことが多くなるということだ。実際、内部統制推進室などを設置したものの、割り当てられる担当者は数人程度で、現場からの協力もなかなか得られないといったケースは少なくない。

永井氏は、このような、これまでの取り組みの有無と経営陣の考え方という要素は、特に2年目以降の取り組みにおいて重要な要素になると語る。

「一般的には、東証への上場準備には2 - 3年の期間を要する。であれば、内部統制の構築整備にも1 - 2年かかることを前提にしたほうがよい。初年度にすべての対応を終わらせようと焦るのではなく、対応できない点は内部統制報告書にそう明記し、2年目以降に改善していくという体制が望ましい」

一方、内部統制対応に苦労を重ねている企業にとっては、経営陣の考え方を変える必要もでてくる。だが、これはきわめて難しい取り組みとも言える。「内部統制への対応は、会社を作りかえるほどの活動になる。投資に見合うだけの効果があがらないとなれば、まえびろの対応を行うとの判断は下しにくい。結果として、法対応を主眼とした対症療法になりやすくなる」

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