ガートナージャパンは、企業の文書作成・管理に関連する、いわゆるドキュメント・ソリューション分野をさまざまな角度から考察する「ガートナー・ドキュメント・ソリューション・セミナー2008」を東京・港区で開催した。

プリンタ、複写機、MFP(Multi Function Peripherals:複合機)などの市場の状況と動向、環境への配慮、世界経済の停滞の影響、注目される新興市場、新たなサービスなどについての解説と、企業が抱えている課題とそれに対するガートナーの提言などが紹介された。

ガートナー ピーター・グラント マネージング・バイスプレジデント

セミナー冒頭の講演では、ピーター・グラント マネージング・バイスプレジデントが「ハードウェア市場の変化:機器の統合、コモディティ化 及び グローバル戦略」との表題で登壇した。

ハードメーカーの抱える大きな課題として、グラント氏は、製品の価格下落が続くなか、どのように利益を確保していくか、また、製品のコモディティ(日用品)化を挙げる。

製品が市場に登場し、発展段階を経て、成熟に向かい、成熟期の後、下降していく、との過程のなか、コモディティ化は、成熟期の次に起こる。当初はカスタム化が基本だったものが標準化され、どのメーカーの製品も機能に差異がほとんどなくなり、価格低下が進み、ユーザー側は価格を基準に製品を購入するようになる。

このような視点でプリンタ分野をみると、複数のインクジェットノズルを用紙幅サイズに並べ、固定する「ライン型インクジェット」の技術をオフィス向けに提供する動きが発展初期の段階にあり、既存のバックオフィス・システム、データベース、エンタプライズ・アプリケーションなどにMFPを接続して高機能化する「スマートMFP」が開発途上にあり、「カラー対応複写機/MFP」やローエンドの「ライン型インクジェット」などが、成熟途上の時期を迎え、シリアル・インクジェット、レーザープリンタ、モノクロMFPなどが成熟期にあるという。

ハードベンダーはサービス品質重視に

コモディティ化の下では、技術面での競争が難しくなるため、ハードベンダーはサービス品質重視に焦点を当てるべきだとガートナーは指摘、「コモディティ化を無視するベンダーは大きな打撃を受けることになるだろう」(グラント氏)と警告する。

従来のプリンタ主力製品がコモディティ化している潮流のなか、高い利益をもたらす手法として浮上しているのが「MPS(Managed Print Service)」だ。MPSは、ハードや消耗品だけでなく、さまざまなソフト、管理ソリューション、各種サービスまでをパッケージ化して販売する。MPSでは、ベンダーがプリント環境の最適化と効率化を図り「ユーザー企業側としては、コスト削減、生産性向上につながる」(同)。また、同社は「ユーザー企業側は、過剰な支出を避けるため、コモディティ化を利用すべき」(同)としている。

また、オープン化とともに仮想化が大きく進展しており、サーバ、ストレージ、データセンターといった、企業向けITを支える根幹といえある要素が仮想化への道をたどっているため、パソコンも含め、ハード製品の使用の重要性はいっそう希薄化する。そのような流れを受け、パソコン、サーバ、ストレージ、プリンタの「4つのセグメントではいずれも、2000年から2007年までに、上位10社のシェアが上昇している」(同)状況で、ハードベンダーはさらに統合化が進む見通しだ。

今後、ベンダー側が採るべき行動として、グラント氏は次のように述べた。「自社の製品がコモディティ化に進む工程の、どのあたりに位置するかを明確に把握し、それに応じて対処する。また、欧米、日本などの先進国以外の新興市場では、潜在市場が大きいことから、これらの市場に注力すべき。どこに研究・開発投資を集中させるか、良く考えることが重要だ。我々はソフト・サービスにチャンスがあるのではないか、とみている」。