韓国では、インターネット電話と自宅の固定電話間の、番号移動制が行われることとなった。これは、韓国政府の放送通信委員会が「市内電話、インターネット電話および080着信課金サービスの番号移動施行などに関する基準改正案に関する件」を議決したことによるものだ。
現在、インターネット電話に加入すると「070」という識別番号が与えられている。一方、自宅の固定電話は、ソウル市であれば「02」で始まる局番が付く形となっている。これらインターネット電話の番号と、自宅の電話番号との番号移動が可能になるというものだ。
インターネット電話は、固定電話に比べて安価なのが長所。しかしこれに変えることで番号が変わってしまうのが、ユーザーにとってはネックで、インターネット電話への変更をためらわせる要因の1つになっていた。そのため今回の決議は、インターネット電話のユーザー層を広めるといった意味で有意義だといえる。
インターネット電話の番号移動に関連して、問題として浮上していたのが「119番(消防)」を始めとした緊急通話だ。固定電話の場合は、電話番号と自宅住所が一致しているため位置把握が簡単だが、IPアドレス基盤のインターネット電話の場合、これまでインターネット事業者や消防署などで連携がなかったため、位置情報の確認が難しかったのだ。
これに関しては、インターネット電話位置情報提供システムを構築。インターネット電話事業者と既存のKT緊急通信システムに位置情報とを連動させて、緊急救助機関にインターネット電話ユーザーの位置情報を提供できるようにした。これにより、インターネット電話で119番通報をすれば、もっとも近い消防署からの出動が可能となる。
ただしユーザーが引っ越しするなどして住所が変わった場合、これをインターネット電話事業者が把握していないと、緊急電話をしても対応できないという事態が発生する可能性もある。そこで放送通信委員会では、ユーザーの利用約款に引っ越しした際の、位置情報の再登録義務を盛り込むことを規定した。
引っ越しに関してもう1つ、インターネット電話で問題がある。それはたとえば、ユーザーがソウル市から釜山市に引っ越した場合、番号がソウル市「02」のままなので、釜山市内に住む人がこの人に電話をかけても、市外電話料金が発生してしまう可能性が生じるのだ。
これに関して放送通信委員会では「こうした問題を、技術的に制限するのは難しい」と述べたうえで「緊急通話のための位置情報登録が行われれば、加入者の位置情報把握が可能であり、この問題も自然に解消される側面がある」と説明している。引っ越しに伴う緊急通話などの問題は、ユーザーの自己申告が命綱になるというわけだ。
やや不安な点を残しながらも、インターネット電話の番号移動制が実行されようとしている。放送通信委員会では、10月内にもこれらが実施されるとしている。それ以降、緊急通話などの問題がスムーズに解決できるのか注目だ。