PCデスクの横にスーパーコンピュータが鎮座する、そんな光景をオフィスで目撃する日も近いかもしれない。
米Crayは9月16日(現地時間)、スーパーコンピュータの新製品「Cray CX1 Supercomputer」を発表した。通常、スーパーコンピュータといえばデータセンターにサーバラックがところ狭しと並ぶイメージだが、Cray CX1は31.04×44.45×90.42cmという7Uのコンパクトな筐体サイズで、少々大きめのフルタワー型PCといった趣だ。1980-1990年代にスーパーコンピュータ界のアイコン的存在だったCrayは、いまもなお世界トップクラスの製品を世に送り出している。CX1はそんな技術の一端をユーザーに手頃なサイズと価格で届けてくれる。
CX1本体はシステムモジュールが組み込まれたブレードを挿入して利用するシャーシ構造になっており、一種のブレードサーバである。1シャーシあたり8枚のブレードモジュールを挿入できる。筐体サイズは7Uのラックマウント型であり、取り外した状態で床や棚などに直接置くことも可能。ブレードなしで I/Oモジュールと電源ユニットのみを搭載した筐体の重量が28.3kg、すべてのブレードを挿入した状態の重量が62kgとなっている。I/Oモジュールにはギガビットイーサネットのほか、InfiniBand用のポートを備える。プロセッサにはIntelのデュアルまたはクァッドコアXeonを採用しており、単位ブレードごとに2-way構成をとっている。そのため8ブレード利用時には単位シャーシあたり計16個のXeonプロセッサを搭載することになる。単位ノードあたりの最大メモリ容量は64GB、内蔵ストレージは最大4TB。
今回の製品リリースにあたってCrayは米Microsoftとの提携を発表しており、CX1のOSとしてWindows HPC Server 2008をサポートしている。製品提供時にはWindows HPC Serverがプリインストールされた形で出荷される。このほかRed Hat Enterprise Linux(RHEL)やSuSE Linuxもサポートしており、利用するソリューションやアプリケーションに応じて適時選択が可能。
Crayによれば、CX1はスーパーコンピュータの処理能力を必要としてはいるが、予算や運用管理面で導入を断念しているスモールオフィスやワークグループクラスのユーザーをターゲットにしているという。オフィスやラボなど、小規模あるいは個別の部門レベルで気軽に導入し、運用やアップグレードが可能な製品となっている。スタート価格は2万5000ドルだ。
スーパーコンピュータとしては異例のヒット商品となった「Cray-1」をリリースして一躍その名を轟かせた米Cray Researchだが、その後の低迷で1996年には米SGI(Silicon Graphics Inc.)に買収された。この間、すでに同社を離れていた創業者のSeymour Cray氏が交通事故で死亡している。一方で買収したSGIも低迷が続いており、1999年にはCrayの分離を計画、最終的に2000年3月にTera ComputerへCray部門を売却した。Cray部門を買収したTera Computerは社名をそのまま「Cray」へと変更、米ワシントン州シアトルを拠点に現在も営業を続けている。近年の活動は、スーパーコンピュータランキングのTop500 Listの上位に顔を出しているサンディア国立研究所の「Red Storm」やオークリッジ国立研究所へ納入した「Jaguar」でうかがい知ることができる。