富士通は8月2日、夏休みの小学生向けイベント「富士通キッズイベント2008 夢をかたちにするしくみ」を同社川崎工場で開催した。同イベントは、子どもたちに技術の素晴らしさを伝えることをテーマとして同社が社会貢献活動の一環として行っているもので、昨年に続いて2回目。今回は、情報オリンピック日本委員会と共同で、コンピュータの基本原理を遊びやゲームを通して体験学習するという内容で、小学校4年生から6年生までの児童約90名(30名ずつ3回)とその保護者が参加した。

小学校4年生から6年生までの児童約90名が参加(写真は2回目の部の30名)

情報オリンピック日本委員会は、国際情報オリンピックに高校生以下の日本代表選手を派遣する事業を中心に行う非営利団体。富士通は、同委員会設立当初から運営を支援しており、今年3月に小中学生を対象としたジュニア部会が設立されことを機に今回の共同開催に至ったもの。

情報オリンピック日本委員会ジュニア部会 兼宗進氏。氏は富士通の子供向けサイト「富士通キッズ: 夢をかたちに」の監修も務める

情報オリンピック日本委員会ジュニア部会の責任者で、一橋大学准教授を務める兼宗進氏は、同部会の活動目的を「小中学生が情報技術に親しみ、その原理を理解して、興味を抱くように導くこと」と語り、今回のイベント開催にあたっても、「楽しみながらコンピュータ技術を学んでいってほしい」と集まった子供たちに向けて挨拶した。

今回のイベントは、2部構成で、第1部では、「楽しみながらコンピュータのしくみを学ぼう!」と題して、40分間の体験型授業を2回にわたって実施。第2部では、「富士通の技術を探検しよう!」と題して、コンピュータの原理が製品にどう生かされているのかについて富士通テクノロジーホールをツアーで見学するといった構成となった。

まず、第1部の1時間目の授業「コンピュータのことばで遊ぼう! (2進数)」では、2進数の考え方や数え方が取り上げられた。最初に、先生役の講師が5枚のカードを子供たちに配り、それぞれのカードの表面に、1、2、4、8、16個の点が書かれていることを一緒に確認。そして、特定のカードを裏返して、表面に現れた点の個数を合計することで、0から31までの数字を表現できることを説明した。

点が書かれた5枚のカードで、10進数と2進数の数え方を学ぶ。点の個数は倍数なので、10進と2進で表せる

会場では、5人1組に分かれた子供たちが、実際に1人1枚ずつカードを裏返しで持ち、例えば7を表現するために1、2、4のカードを持つ子供だけがカードを表面にして掲げるといったゲームを実施した。なかでも、0から31までの数字を順番に作っていくシーンでは、会場で初めて顔を合わせた5人が協力し合い、それぞれのカードを裏、表と回転させながら次々とこなしていく姿に、会場奥で参観していた保護者からも歓声が上がった。

1人ずつカードを持ち、5人のチームプレーで0から31までの数を表現。次々と正解を出す子供たちに歓声がとぶ

そうしたゲームのあと、先生からは、カードの表と裏を1と0に置き換えれば、0から31までの十進数は、1と0だけの2進数で表現できることが説明された。そのうえで、コンピュータの分野では、1と0のような2つの状態で、音(モールス信号、FAX)や電圧、磁気(FDD、HDD)、光(CD、DVD)を表現していることが紹介された。

2時間目の授業「数を使ってお絵描き1・2・3!」は、画像処理が題材となった。まず、コンピュータの画像は、小さな点が集まって作られていおり、点の位置は数字で表すことができると説明。そして、実際に、10×10のマス目の一部を塗りつぶして描かれた絵と、その絵を数字で表した表を掲げ、どのような決まりで数字が並んでいるかを子供たちに問いかけながら解説を加えていった。

マス目と数字の表の対応関係を説明。「最初の数字は白いマスの数で、その次は黒いマスの数。最初が黒の場合は0とすると……」

例えば、まったく塗りつぶされていない白い行の場合は「10」、すべてのマスが黒く塗りつぶされた行の場合は「0、10」、最初の2マスが白で次の4マスが黒、その次の2マスが白といった行の場合は「2、4、2」といったもの。この場合は、「最初の数字は白いマスの数、その次は黒いマスの数……といったように色が変わるたびにマスの数を数字で表している。最初が黒の場合は0で始まる」といった決まりとなる。

その決まりを踏まえたうえで、まったく塗りつぶされていないマス目と数字だけが書かれたプリントを配布。数字から絵を完成させたり、完成させた絵を友達に送って再度数字に直したりといったゲームを行った。そのうえで、コンピュータでは、マスのことをピクセルと呼んでおり、文字や絵、音などはすべて数字で表現していることが紹介された。

数字の並びの決まりを知り、数字から絵を完成させていく。数字から絵へ、絵から数字へ変換するFAXゲームも

続く、第2部では、富士通テクノロジーホールへ移動し、保護者とともに、技術の歴史を振り返る「History Zone」、新技術を紹介する「Now & Future Zone」、2足歩行ロボット「HOAP-3」と触れあうことができる「Presentation Zone」の3つのゾーンをめぐった。

History Zoneでは、現在でも稼働するリレー式自動計算機や深海に沈む海底ケーブルなど、富士通がこれまでに開発してきた技術や製品を見学。また、Now & Future Zoneでは、静脈認証システムや、RFIDを利用した在庫管理、文書管理システムなどといった富士通の最新技術に触れた。そして、Presentation Zoneでは、素早く方向転換したり、太極拳をしたりするHOAP-3のデモを食い入るように見つめ、デモの最後でHOAP-3と握手できたことに喜んでいた。

富士通テクノロジーホールに展示されたリレー式自動計算機。現在でも稼働させることができる

太極拳をする2足歩行ロボット「HOAP-3」のデモを食い入るように見つめる子供たち

富士通 コーポレートブランド室 部長 及川幸一氏。参加したスタッフ全員がオリジナルTシャツを着用

富士通のコーポレートブランド室で部長を務める及川幸一氏によると、今回のイベントで取り上げたコンピュータの基本原理についてのクイズやゲームは、子ども向けサイト「富士通キッズ : 夢をかたちに」で順次公開していく予定。すでに、2進数と画像処理については公開済みで、さまざまなクイズに挑戦しながら、子供と一緒に家庭で学習が進められる仕組みになっている。

富士通は、これまでにも、全国各地の工場に子供たちを招き、PCの組み立て体験学習を実施するといった活動を行ってきたが、今後も、「子供向けサイトと連動したイベントを開催するなどして、コンピュータ教育の振興に努めていきたい」(及川氏)としている。

神奈川県在住の高正さんご家族。侑典くんと玲菜ちゃんが兄妹で参加。「コンピュータを作る仕事に携わっているので、子供たちにもはやくからコンピュータに慣れ親しんでほしいと思っている」と高正さん

米国在住のショーンくんは、夏休みの一時帰国を利用して参加。「息子はいまロボティクスのクラブに所属していて、コンピュータやロボットに熱中している。今回のようなイベントがもっと増えればいいと思う」とお母さん