シーメンスPMLソフトウェアは12日、記者向けの説明会を開催し、5月に発表があったCAD/CAM/CAE統合製品の新版「NX 6」の主要機能をデモした。新版は、旧UGS PLM ソリューションズから提供されていた旧版NX 5から約1年を経てのメジャーアップデート。370以上の機能改善が施されたほか、「シンクロナス・テクノロジー」と呼ばれる新たなモデリング技術を搭載したことが大きな特徴となっている。
主要機能の説明にあたった、シーメンスPLMソフトウェアでアジア太平洋地域マーケティング・ディレクターのディーター・クリンケ氏によると、シンクロナス・テクノロジーは、「形状、形状を設計するロジック、実際に設計を描いていくルールの3つを同期的に解決する技術」という。具体的には、V6では、従来から搭載されていたフィーチャモデリング(形状の要素情報を持ったモデリング)とダイレクトモデリング(形状の要素情報を持たないまま形状を直接編集するモデリング)の両モデリングにおいて、履歴をも持たない状態でのモデリングが可能になったという。
「フィーチャ、パラメータ、ヒストリーがない状態でも編集が可能であるため、そのモデルがどのように作られたかを気にする必要はまったくない。いわば、デザイン・フリーダムをもたらす画期的なテクノロジーと言える」(同氏)
クリンケ氏は、このシンクロナス・テクノロジーがもたらす特徴を、柔軟性、生産性、協調性、強靱性という4つのキーワードを用いて説明した。柔軟性については、例えば、ダイレクト・モデリングによって、面を選択して引っ張りだして形状を変更したり、寸法に合った状態のまま形状を移動、拡大できたりする機能を指す。また、生産性については、形状をコピー&ペーストして、形状の再利用を可能にするもので、スクラップブック・モデリングなどと呼ばれているものという。
そして、協調性とは、同時に1つのデータベースにアクセスし、チーム全体でのコラボレーションを行う機能。V5に比べ、データベースへのアクセス速度が向上したほか、1つの画面上で設計とシミュレーションを同時に行うといったことも可能になったという。最後の強靱性は、過去に作成した形状をテンプレートとして登録し、ナレッジとして有効活用する機能。クリンケ氏は、団塊世代の技術者が退職することでナレッジの継承が難しくなるといった事態を防ぐことにも使えるだろうとしている。
NX V6の米国における販売は、6月30日を予定している。日本国内については、従来どおり、パートナー企業から販売される予定。シーメンスPLMソフトウェア日本法人で代表取締役社長を務める三澤一文氏は、「シンクロナス・テクノロジーの採用によって、ユーザーの対象が広がったと言える。CADを使い慣れない人でも、モデルの確認を行ったりする用途などに適用できる」とし、既存ユーザーのほか、新規ユーザーの取り込みも図っていく構え。なお、NXは、現在、日産自動車、マツダ、キヤノンなどで利用されているという。