ネット文学が注目されるきっかけであり、ネット上で知り合い恋に落ちた男女の悲劇を描いた「はじめての親密な触れ合い(第一次親密接触)」、短編小説集「薇安との別れ(告別薇安)」、官能小説「成都よ、今夜のうちに私を忘れて(成都、今夜請将我遺忘)」など、現在の中国では、多くのネット文学作品が生まれ、いまやその勢いは無視できないものとなっている。

ネット文学は、庶民が自ら創造する完全自由のプラットフォームであり、その勃興は、従来の「紙」を媒介とする伝統メディアの支配を覆し、創作好きな人々に均等な機会を与える可能性を秘めている。本稿では、中国のネット文学の現状と、今後の発展の方向性について、検討を加えてみたいと思う。

ネット文学作家の大半は、他の職業との兼職者

ネット文学は中国で誕生してからまだ10年の歴史しかないが、もはや若者だけのものではない。創作者の中には、50代、60代のベテランもいれば、小中学生もいる。だが、その中核は20代、30代の若手作者だ。

ネット文学のサイトは、いまや中国最大のオリジナル文学サイトの一つであり、2万人あまりの書き手を抱えている。彼らのうちの約10分の1が、多大な収益をもたらす「VIP作品」を創作しており、40分の1の人が、書籍を上梓している。作者の大半は兼職者で、きわめて少数の人が収入の安定している専業作家として創作を続けている。

ネットワークの巨大なスペースは、これまで、多くの著名なネット文学作家を生んできた。神や仙人、鬼、妖怪などを作品に登場させる「仙侠創作」潮流の先端をいく作品「誅仙」の作者である蕭鼎氏や、歴史フィクションの傑作「新宋」の作者、阿越氏がその代表だ。

この潮流にはさらに、「スチュワーデスと同居の日々」の作者、三十氏もいれば、「獣王」、「御獣齋」の作者で、その作品名から「寵獣天王」とも呼ばれる雨魔氏もいる。このほかにも、少年陸雲が怪人と出会って修行し、伝説の謎を解く物語「七界伝説」の作者「人気天王」こと心夢無痕氏、魔法学院で学習する生徒の間の恋愛を描いた「人狼国度」の作者で、「超級快手」こと青墨氏など、数え上げれば紙面が足りないくらいだ。

すご腕の書き手は1年で1,500万円以上荒稼ぎ

一般的に言えば、有料創作グループの仲間入りさえ果たせば、ネット文学作家としての収入はそれまでをはるかに上回るようになる。報酬をとれる書き手の大半は専門職の書き手なのだが、兼職の書き手も仕事の余暇を利用して頑張れば、ネットワーク上での名声や高収入を得ることができる。2001年に開設されたネット文学のポータルサイト「幻剣書盟」の責任者によれば、ネットワーク上の創作に対しては、月単位で原稿料を計算して支払う。すご腕の書き手なら、1年で100万元(約1,500万円)以上も稼ぐことができるという。

ネット小説の従来の文学作品との大きな違いは、読者の目的が「娯楽と暇つぶし」にあり、気軽で楽しい小説が一番気に入られるという点にある。ネット文学の専門家が、現在の作品を分析した結果によると、ネット文学の書き手が高収入を得るには、いくつかの基本条件が必要だという。

まず、素材が読者に好まれそうなものであること、そしてエンターテイメント性が豊かであることだ。さらに、作者が安定した創作活動を維持することも必要だ。これらの条件を満たすことにより、読者を確保し、編集者にも気に入られ、サイト側からの有力な支持を得ることができる。

閲読費用の安さが急速な普及の要因に

ネット小説では、閲読費用の安さが、磁石のように多くの読者を引き付ける重要な要素の一つとなっている。サイト側の料金規定では、1,000字あたりが0.03元(約0.45円)なので、これで計算すると20万字閲読してもほんの6元(約90円)にすぎない。この価格は、もちろん紙の書籍よりはるかに安い。

ネット文学を有料で閲読させるというビジネスモデルは、一つの時代を切り開いたといえる。まさに、ネット文学に自らの発展に適したやり方を見出させたのだ。

だが、何といってもネット文学の歴史は余りにも短い。ネットワークでの創作活動はそもそも、自由で敷居が低いため、作品の品質も玉石混淆なのだ。この点は、ネット文学が長続きできるかどうかについて、人々が最も懸念するところとなっている。

ネット文学が今日ほど盛んになっても、一部の低俗なものがなお流行っているのは、サイト側との関係があるからだ。一部のサイトは、目先の利益を追求するために、短命でも手っ取り早く人気を集められるものを重宝する。将来、ますます多くの伝統作家がネット文学創作を始め、また若いネットワーク文学の書き手たちも旺盛な創作を続けることだろう。現在望まれていることは、文学サイトが責任を持って厳しく内容を審査し、低俗な作品を排斥して、作者をよりまっとうな方向へ導くことだ。

(中編に続く)