日本オラクルの新たなリーダーとなる、遠藤隆雄氏

日本オラクルは6月1日付で、遠藤隆雄氏が社長執行役員 最高経営責任者に、新宅正明社長が代表取締役会長に就任、新たな執行体制が始動した。同社では、新社長就任に当たっての記者会見を開催した。遠藤新社長は「日本オラクルは、次の成長に向けての『第2巻』が始まる。引き続きデータベースを伸長させていくが、加えて、SOAプラットフォームとビジネスアプリケーションに注力していきたい」と抱負を語った。

同社が、米オラクルの日本法人として設立されたのは1985年。ここまでの同社の歩みを「日本の社会に根付き、基盤事業を構築してきた『第1巻』は、データベースで高い評価を受け、顧客にすばらしい価値を提供することができた」と遠藤氏は評する。

遠藤氏は「日本であれ、海外であれ、顧客の関心は、昨今、経営をとりまく環境が極めて厳しいことにある。経営者のほとんどは、変革を望んでいる。コストを低減化し、ビジネスの改革にチャレンジしようと考えている。しかし、成長戦略の推進とコスト削減を同時に実行するのは難しいことだ」と指摘する。

変革がそれほど容易には実現しないことの理由として、遠藤氏は「業務プロセスそのもののデザインを決めることができない。過去の成功体験やシステムのブラックボックス化により、これまでのしくみをなかなか変えられない。システムが複雑化しているため、変更によりさまざまな影響が及び、システムを変えたくても変えられない。組織を変革できず、人が動かないことが足かせになっている」などの点を挙げる。

日本オラクルはこれらへの対策として「業務プロセスのデザイン、システムの刷新の面で解決策を提示することができる。プロセスを効率化するビジネスソリューション群は、ERPだけでなくCRM、SCMもそろえており、これらを示して顧客がアイディアを創出し、新たなイノベーションを作るきっかけとして使ってもらえる」(遠藤社長)とする。遠藤氏は「SOAプラットフォームが確立していれば、変化への柔軟性が上がってくる。変化への対応のため、SOAプラットフォームとビジネスアプリケーションのコアとなるコンポーネントを同時に提供できるのはオラクルだけだろう」と述べ、SOAプラットフォームの重要性を強調した。

第2巻への施策としてはまず「グローバル戦略との連携を見据えた展開と、ローカルの取り組みの両面を強化していきたい。機能を横断したチームワークを強化して、パートナーと技術者によるコミュニティを大切にしていく。『IT屋』として、ITベースのコンポーネントを提供するが、経営にどう活用してもらうかということは、パートナーといっしょに考え、進める。IT企業は1社だけですべてを網羅することは不可能だ。パートナーと共同で、トータルで価値を提供する」意向で「顧客と、成功だけでなく感動も共有できるようになれば結果はついてくる」としている。

遠藤氏は54歳、1977年東京大学工学部を卒業後、同年日本IBMに入社、同じく同社出身の新宅会長の1期「先輩」になる。以来、社長補佐、サービス事業 製造・流通サービス事業部長、常務執行役員など要職を歴任、2007年8月に同社を退職しており、「日本IBM時代の後半は、サービス事業の仕事を長く続けた。オラクルとは緊密なパートナー関係にあり、オラクルのビジネスソリューションを担いでいた」(同)。IBMもオラクルも「外資系」だが「日本オラクルは東証1部に上場している、外資系としては数少ない企業だ。日本社会の一員としてコミットしていく、日本流のやり方で貢献できる部分もある」(同)

新社長の趣味は囲碁だ。遠藤氏は「日本IBMの囲碁部に属していた。囲碁から発した言葉で好きな言葉がある。大局観と布石だ。仕事でも、全体を見渡した上で、次の一手を打つ。大局観をもって布石を打っていきたい」と話す

新宅会長は「(入社してからの)18年間の日本オラクルのこれまでは、先週をもって一旦終わったという気持ちで、新しい『巻』を開く。8年間社長を務めていた間にもいろいろなことがあった。データベースを中心に事業を展開してきたが、世界的な買収・合併戦略で、製品の幅も広がった。ここで次の手が必要になる。パートナーとの関係も含めたグランドデザインを描かなければならない。次の世代のオラクルがよって立つグランドデザインをつくるには、全体を鳥瞰できる能力を要する。見識が深く、リーダーシップがある遠藤氏は(新たなリーダーに)最適だと考えた。制約はまったくつけない。存分に力を発揮してほしい」と話し、新社長への強い信頼感を示した。

新宅正明会長(左)と、遠藤隆雄社長