中毒者全体の1割強が18才から23才までの世代
中国の若者のインターネット利用に関する調査を行っている中国青少年網絡協会が今年1月中旬に公表した「中国青少年ネット中毒データ報告2007(中国青少年網※1数据報告2007)」によると、中国の青少年全体の中でネット中毒者が占める比率は、2005年より3.48ポイント下落したものの、依然として9.72%という高いレベルにある。
※1は「病だれ」に「隠」
ネット中毒者の中では、18才から23才までの年齢層が最も多く、中毒者全体の11.4%を占めている。中国青少年網絡協会秘書長(事務局長)の※2向宏氏は、「中退した大学生のうち、オンラインゲーム耽溺者が占める割合が非常に高い」として、オンラインゲームが大学生に及ぼす悪影響に警鐘を鳴らしている。
※2は「赤」の右に「おおざと」
これまでみてきた通り、オンラインゲームは、世界の多くの国々と同じように、中国でもネット中毒や学業放棄などの最大の誘因の一つとされ、常に論争を呼ぶ話題である。無料ゲームなどで暴利を貪りながら、高成長を続けているオンラインゲーム企業に対する風当たりは、高収益が発表された年度報告書の公表を機に、一層強まってきている。
若年層に関するニュースを報じる新聞「中国青年報」は、2月23日付紙面で、「 オンラインゲームの暴利は社会の痛み(網遊暴利是社会之痛)」というタイトルで記事を掲載した。この記事は、オンラインゲームの高収益ぶりに対して、中国が青少年ネット中毒など大きな社会的代価を払っている事実と、近年実施されてきたインターネット実名制、ネット中毒防止システムなどが、有名無実となっている現実を指摘。その上で、オンラインゲームに対する管理強化を訴えた。
「悪魔」の汚名返上なるか
この記事はすぐに多くのメディアに転載され、大きな反響を呼んだ。中には、歯に衣を着せず、「オンラインゲームは青少年に精神的な害を与える悪魔」と言い切るメディア関係者や精神医なども出てきている。中国社会に、ネット中毒などを引き起こすオンラインゲームに対する批判や嫌悪感が強くなってきていることがうかがえる。
2月末、中国で新聞・出版業界を管轄する中国国家新聞出版総署は、優れた出版物やメディアを表彰する「第1回中国出版政府賞」の選考結果を公表した。100タイトルの出版物、50社ほどの出版社が受賞したが、オンラインゲームはネット中毒防止システムの有効性に問題があるとされ、いずれも落選した。これも、中国政府のオンラインゲームに対する姿勢、特に中毒問題に対する態度が厳しくなってきていることの表れといえよう。
暴利を貪りつつも高成長を続ける「経済的な強者」と、社会的に嫌われる「悪者」という2つの顔を持ち合わせるオンラインゲーム。さらにビジネス的にこれにすがりつく大手ポータルサイトやオンラインゲーム企業。彼らが今後いかにして「汚名返上」を実現し、社会との共生を成し得るかは、オンラインゲーム業界だけではなく、中国社会全体にとっても非常に重要な課題である。その取り組みに注目していきたい。