ASP・SaaSイノベーション・シンポジウム2008(ASIS2008)の基調講演では、総務省の増田寛也大臣に引き続き、主催者である特定非営利活動法人ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム(ASPIC)の河合輝欣会長が「ASP・SaaSの現状と今後」に関して、また、ガートナージャパンの日高信彦社長が「今なぜASP・SaaSなのか」をテーマにそれぞれ講演した。

ASPICの河合輝欣会長

ASPIC・河合会長は、冒頭、ASPおよびSaaSの定義について説明。「特定および不特定ユーザーが必要とするシステム機能を、ネットワークを通じて提供するサービス、あるいはそうしたサービスを提供するビジネスモデルのことを指す」とし、「SaaSやユーティリティコンピューティング、オンデマンドコンピューティングなどの類似の用語が存在するが、ほとんどASPと同一の意味で使用されている。ASPとSaaSがどう違うのか、ということを顧客の前で説明していてもまったく意味がない」とした。

河合会長は、2005年に刊行された「ASP白書2005」に掲載された内容をアップデートする形で、ASPおよびSaaSの最新状況を紹介した。

「日本国内におけるASP・SaaS事業者は、600社から1000社へと拡大しており、市場全体は年率約30%の成長を遂げている。データセンタを含めた関連市場は年率10数%の成長を続けている。事業者などへのヒアリングの結果、2012年には2兆円の市場規模に達すると予測している」と、初めて、2兆円という市場規模に達する見通しを明らかにした。

着実に成長するASP・SaaS市場は、2012年に2兆円規模へ

また、「ASP・SaaSは、社会、経済活動に不可欠なインフラサービスへと変貌している。提供サービスは、フロントオフィス、バックオフィス、グループウェアに浸透しているが、幅の広がりと層の深まりが進行している。フロントオフィスのなかでは販売支援、営業支援、販売促進管理、CRMでの利用が多い。また、製造業、情報通信業、卸売・小売業でとくに大きな実績をあげているが、他業種でも広く利用されているようになっている」とした。

ASP・SaaSの業務領域別/業種別の浸透度

さらに、「ASP・SaaSに新規参入する事業者が多く、市場拡大に寄与している。事業年数が2年以下という企業が約2割を占めている。参入後3年を経過すると、好業績をあげる事業者の割合が大幅に増加するほか、中小規模の事業者においても、急成長する事業者が15%弱見られる。大企業では事業年数が長くなると計画達成率が75%に達している。また、ビジネス連携をまったく考えていない事業者はほとんどなく、連携による売り上げ比率が8割に達している事業者は全体の25%に及んでいる。連携効果は事業実績、営業促進、販売・営業コストの低減に効果があると実感しているようだ」などとした。

一方で、ASP・SaaS市場が抱える課題として、ユーザーへのさらなる普及促進が必要とされること、健全な市場形成のために「ASP・SaaSの安全・信頼性に係わる情報開示認定制度」を推進する必要性に加え、事業者間のビジネス連携が今後の市場を拡大する原動力となることから、連携促進のためのインタフェース標準化などの施策が必要とした。

「安全・信頼性認定制度は、事業を拡大発展させるものとして行っている制度。健全な市場を育成するためのものである。事業者の成長に水をかけるというつもりはない」などとした。

ASP・SaaSの安全・信頼性に係わる情報開示認定制度の全体像

ASPICは、今年度で設立以来9期目に突入しており、普及促進活動として、安全・信頼性委員会、ASP連携委員会、企業ディレクトリ委員会、国際連携委員会を通じた取り組みを開始している。

企業ディレクトリ委員会では、7つの想定利用シーンを設定し、企業ディレクトリを活用したASP・SaaSのデータ連携の有効性などを示している。

企業ディレクトリの利用シーン

河合会長は、「政府閣議のなかでもASPやSaaSという言葉が使われている。また、100人未満の従業員数を中心にサービスを提供している事業者が過半数を占め、中小企業に対して着実に浸透してきている。ASPICとしては、こうした成長市場において、ASP・SaaS市場が健全に成長していくための各種施策の推進に努めていく」と締めくくった。