日本オラクルは、プロジェクト管理アプリケーション「Oracle Projects」の最新版を発売した。この製品は、企業が取り組むプロジェクトについて、契約管理、請求管理、工程進捗管理、リソース管理などの情報を一元的に管理、把握、分析することが可能で、プロジェクトの状況全体を監視、進行に当たっての問題点などを明示、企業の意思決定を支援する。

日本オラクル 製品戦略統括本部 アプリケーション推進本部 ディレクターの塚越秀吉氏

今回は、契約管理を担う「Oracle Project Contracts」と、投資対効果分析を行う「Oracle Project Portfolio Analysis」が追加された。近年、企業経営に対し、プロジェクト管理が重点化しており、2009年4月以降の事業年度から適用が義務化される工事進行基準への対応を求められる企業からの需要に応える。

同社 製品戦略統括本部 アプリケーション推進本部 ディレクターの塚越秀吉氏は「プロジェクトは、決められた予算内、限られた時間のなかで、製品やサービスをデリバリーしなけらばならない。いわば、企業活動を凝縮したものであり、一つのプロジェクトが成功するかどうかは、企業経営に大きく影響してくる」と指摘、プロジェクトの進行状況を精密に把握、それに基づいて、企業が次にどのように行動するか、その意思決定が重要であることを強調した。

日本オラクル 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進部 ディレクター 桜本利幸氏

同社が今回、プロジェクト管理のアプリケーションを強化したのは、最近、高度なプロジェクト管理、精緻なプロジェクト会計が求められていることが背景にある。この数年で、プロジェクトはより大型化、複雑化するとともに事業展開がグローバル化している。また、プロジェクトそのものが多様化、多くの業態で実行されるようになった。さらに「事業活動は単体ではなく、グループ経営の形態が増え、日本版SOX法施行にともない、内部統制にも対応しなければならない」(製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進部 ディレクター 桜本利幸氏)状況だ。

会計基準変更で「いまや、SIも工事」

会計基準が変更されたことも大きな要因だ。2009年4月から、工事契約に対する工事進行基準の適用範囲が拡大されることとなった。ここでは工事契約を「仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち、土木、建設、造船や一定の機械装置の製造等、基本的な仕様や作業内容を顧客の指示に基づいて行うもの」と定義、SI事業も工事契約に準じた扱いを受ける。工事契約では「工事収益総額、工事原価総額、決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益および工事原価を認識する」とされる。

桜本氏は、現在のプロジェクトが抱える課題を以下のように指摘する。 「契約管理」では、契約の範囲、期間、金額が十分明確でないことがあり、「プロジェクト管理」では、進捗や品質の管理が必ずしもうまくできていない。「原価管理」では、管理手法が不備であったり、赤字が発生した場合、その額の把握が徹底していないことがあるという。さらに「会計処理」では、社内ルールが未確立で、標準がなく、会計システムと連携していない。

「Oracle Projects」は、さまざまな機能を担当する複数のモジュールで構成されている。「Oracle Project Intelligence」がポータルとしての機能を受け持ち、事業領域、組織単位などのレベルで、プロジェクト情報を収集して閲覧することができ、それぞれの領域や組織ごとの視点で、プロジェクトの収益性をリアルタイムに把握する。

この最新版で新たに付加された「Oracle Project Portfolio Analysis」は、プロジェクトの投資対効果を計量する。

「Oracle Project Management」は、プロジェクト全般の計画を立てる機能をもち、スケジュール、リソース、実行予算を計画する。経営計画と実績の対比や予測管理に利用することができる。

「Oracle Project Costing」は稼動プロジェクトの原価収集や資産計上を管理、今回追加された「Oracle Project Contracts」が、プロジェクトに関わる契約手続きや契約情報を管理する。

請求管理やリアルタイムな収益管理を行う「Oracle Project Billing」、リソースの検索や配置、稼動状況を管理する「Oracle Project Resource Management」、プロジェクトメンバーによる情報管理や共有ができ、プロジェクトの進捗入力、課題変更の対応、時間や経費の入力を行う「Project Collaboration」も用意されている。

これらのモジュールと「Oracle Applications」の会計システムを連携して活用することで、プロジェクト収益と原価の見積もり精度向上やプロジェクトの進捗度や契約変更に合致した会計処理も可能になり、「収益総額、原価総額、進捗度を把握することができる」(桜本氏)ことになる。

新たな会計基準では、工事進行基準は「工事収益総額、工事原価総額、工事進捗度を信頼性をもって見積もることができる場合」適用される。収益総額、原価総額、進捗度が見積もれない場合、工事が完成し、目的物の引渡しを行った時点で、収益、原価を認識する工事完成基準が適用されるが、これは「この工事は、適正な見積りができていないと公言しているのと同様」(同)であり、SI事業者にとっても信用にかかわることにもなりかねないという。

建設業では「税務上、2年以上かつ50億円以上の工事について工事進行基準が原則適用される」が、同社では「建設業でも、工事進行基準を採用しているのはまだ2/3で、SI事業者はまだこれからで、大きな市場がある」(同)とみており、期待をかけている。

「Oracle Projects」の画面