ボーランドのCodeGear事業本部は、日本市場への投入が予定されている「3rdRail 1.1 日本語版」に関する記者発表会を開催した。
CodeGear買収に関しての詳細は6月12日に発表
「3rdRail 1.1 日本語版」の詳細説明が行われる前に、CodeGear事業本部 本部長の八重樫行男氏からCodeGearに関するこれまでの経緯が紹介された。
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CodeGear事業本部 本部長の八重樫行男氏 |
米Borland Softwareは2006年2月に開発ツール部門を分離、同年11月にCodeGearを設立し社内分社化での開発ツールビジネス展開を開始している。そして、2008年5月7日には米Embarcadero Technologies(エンバカデロ テクノロジーズ)がCodeGearの買収で合意したと発表されたわけだが、八重樫氏は「2008年6月末までの取引完了を見込んでいる。両社の合併により、世界最大規模の開発ツールおよびデータベースツールの独立系ソフトウェアプロバイダが誕生する」と語る。なお、この買収については6月12日に開催される「第9回 CodeGearデベロッパーキャンプ」で詳細説明が行われる予定となっており、八重樫氏も「現時点でこれ以上発表できることはない」とコメントしている。
幅広い層に対応したIDEでRubyマーケットを牽引
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CodeGearマーケティングディレクターの藤井等氏 |
続いてCodeGearマーケティングディレクターの藤井等氏より、「Ruby」および「Ruby on Rails(以下、ROR)」市場と「3rdRail」に関する説明が行われた。そもそも「Ruby」とは、通称「Matz」ことまつもとゆきひろ氏により開発された、シンプルかつ高い生産性を備える純国産のオブジェクト指向スクリプト言語だ。このRubyで開発されたのが、「MVC(Model View Controller)」アーキテクチャに基づく、オープンソースのWebアプリケーションフレームワーク「RoR」である。
RoRは「DRY(Don't Repeat Yourself):同じことを繰り返さない」、「CoC(Convention over Configuration):設定よりも規約」を基本理念としており、少ないコードで簡単に開発できるのが特徴。藤井氏は「欧米でRoRがブレイクし、逆輸入する形でベースの言語であるRubyにも注目が集まった」と語る。
今回発売が予定されている「3rdRail」は、RubyおよびRoRの開発に特化したIDE(Integrated Development Environment:統合開発環境)だ。開発を効率化する支援機能として、複雑なアプリケーション関係を把握しやすい依存関係ビューやプロジェクト管理、コマンド環境を統合するコマンダー、コード入力支援、リファクタリング、デバッガ、ウィザード形式の入力などをサポート。エキスパートにはプロ仕様のコマンド環境とIDEのメリットを融合、若手プログラマには開発手順をガイドするウィザード形式と、スキルを問わず幅広いプログラマ層に対応している。藤井氏は3rdRailの位置付けを「Rubyマーケットの牽引役」とし、RoRをビジネスで活用するためのインフラを提供、「Rubyコミュニティ」と「ビジネスにおけるRoRの活用」の2点間をつなぐ懸け橋の役割を担うという。
ちなみに3rdRailというネーミングは、電気鉄道の集電方式である「第三軌条方式(サードレール方式)」に由来する。これは、2本の走行用レールと並行して敷かれた第三の電源供給用レールから電源を供給するもので、2本の走行用レール(Reils)の上を走る列車(プログラム)に電力(パワー)を供給するという見立てからきている。
Eclipse 3.3ベースながらフルローカライズを実現
3rdRail 1.1の新機能としては、複数バージョンのRailsをサポートしているほか、高速Rubyデバッガを採用。日本語版では英語版1.1相当の機能に加えて、UIやドキュメント、ビデオまでがフルローカライズされている。なお、3rdRailは「Eclipse 3.3」をベースとしたものだが、現時点ではまだEclipse 3.3の日本語ランゲージパックが提供されていない。しかし今回は、Pleiadesとのコラボレーションおよび作者である柏原氏のサポートにより、3rdRailのフルローカライズを実現した。「Eclipse DLTK(ダイナミック言語ツールキット)」や「ATF(Ajaxツールキットフレームワーク)」に関する日本語化などの成果は、コミュニティへ還元されるという。
3rdRail 1.1 日本語版の動作環境はRuby 1.8.5以上、Rails 1.2.x以上/Rails 2.0.x以上、Windows XP/Vista、Mac OS X 10.4または10.5、Ubuntu Linux 7.10。
なお、今回発表された3rdRail 1.1 日本語版はプレビューのため発売日や価格は未定だが、5月22日には改めて詳細発表が行われる予定だ。