会社でもあり、バンドでもある
「『アニミュージック』は、CGアニメーションと電子音楽が融合した作品。『アニミュージック』は、楽器(のキャラクター)自体が音を出すということが特徴です」
そう語るのは、アニミュージック社の代表、ウェイン・ライトル氏だ。同社は日本の代理店であるジョルダンとともにアニミュージック社の最新作DVD「アニミュージック 2」のプロモーション活動を展開中であり、そのプロモーションのために代表であるライトル氏自らが来日した。
「アニミュージック 2」の面白さは、CGキャラクターとなった楽器が、音楽と完全にシンクロした動きを見せる点にある。「アニメ作品を見ている」のと同時に「音楽DVDを見ている」という気分になる不思議な作品だ。ライトル氏自身「アニミュージック社は会社とも言えるし、バンドとも言える存在。この『アニミュージック 2』は、音楽アルバムとして捉えていただいても良いでしょう」と話す。
音楽とアニメーションの融合というと、ディズニーの「ファンタジア」を思い浮かべる人もいるだろう。何か影響は受けているのだろうか。
「『ファンタジア』は、アニメーションで世界観を見せています。それに対して『アニミュージック』は、各楽器がキャラクターとして自ら音を出している。『ファンタジア』は素晴らしい作品ですし、『アニミュージック』のほうが優れているとも言いませんが、音楽とアニメーションを完全にシンクロさせているということが最大の違いです」
ライトル氏は、もともとバンドでキーボードを弾いていた経験があり、同時にピクサー・アニメーション・スタジオのファンでもあったという。
「『アニミュージック』を制作した最初のモチベーションは、まずCGアニメーションが大好きだということ。そして、音楽もコンピュータも大好きでした。これらを融合させたら、どれくらい面白いものができるんだろう"という思いが最初にありました。『アニミュージック』で様々なジャンルの作品を出して、大人から子供まで、多くの人からフィードバックをもらいました。そういった声を聞くと、さらなるモチベーションになりますね」
作り手がエンジョイできることを大切にしたい
アニミュージック社は、その作品について「どんな機材、システム環境で制作したのか」ということを非常に良く聞かれるという。CGアニメーションとMIDIデータの完全なシンクロを実現するための中核となるのが「アニミュージックスタジオ」というツール。アニミュージックを制作するために、ツール自体を同社が独自開発した。しかし、ライトル氏はこうも語る。
「どれくらい技術が優れているかということよりも、作り手自身がどこまでエンジョイできるかということを大切にしています」
ところで、クリエイティブディレクターとしてアニミュージックの制作を指揮する中で、各楽器への感情移入はあるのだろうか。例えば「もし楽器が生きていたら」といった発想は、このアニミュージックに込められているのだろうか。
「そうですね、技術的なことを細かく見るよりも、そういう観点から作品を見てもらえるのがうれしいですね。数学的なコンピュータの話とか、解像度が何ピクセルかなんて、別にいいんです。実際に意図したとおりに楽器が音楽とシンクロしたときは、ちゃんと動いてくれてありがとう、という気持ちになりますね」
ゆくゆくは子供が気軽にプレイできるものを
ところで、「アニミュージック」という作品は、なぜDVDパッケージという形態をとったのだろう。アプリケーションとして提供すること、オンラインで試聴させることなど、いろいろ選択肢はあったはずだ。
ところで、「アニミュージック」という作品は、なぜDVDパッケージという形態をとったのだろう。アプリケーションとして提供すること、オンラインで試聴させることなど、いろいろ選択肢はあったはずだ。
「多くの人にに観てもらうためには、いろいろな方法があります。映画館で上映するといった方法だってある。だけど、大人から子供までみんなが見ることができるのは、やはりDVDだと思うのです。今後は、ユーザーが『アニミュージック』を動かすこともできるようになるかもしれません。事実、そうしてほしいという声はたくさん届いています。将来的には子供にとって使いやすい、手頃にプレイできるものを作りたいと考えています」
現在でもすでに高い完成度にある「アニミュージック 2」だが、ライトル氏は「まだまだ長い道を歩まなくてはいけません」という。
「アニミュージック社でクリエイティブを担当しているデーブという人物がいます。彼がもっと良いアーティストに成長して、そして私が担当するテクノロジーの面でももっと進化して、両方の面から我々が協力し、さらに良い作品を作りたいと思っています」とライトル氏は締めくくった。