日立製作所 RAIDシステム事業部 製品企画部長 島田朗伸氏

日立製作所と日本オラクルは、事業継続管理(BCM:Business Continuity Management)プラットフォームソリューションの確立を目指し、仮想化技術を利用したストレージ管理、災害対策システムの構築と運用管理手法の共同検証を「Oracle GRID Center」で実施、このほどその成果をベストプラクティスとして公開した。日立の仮想化技術とオラクルのデータベース管理技術を組み合わせ、ビジネスにおけるITシステムの重要性が高まるなか、「止められないシステム」を求める需要に応えるソリューションを提供することを目指す。

ストレージのボリューム容量の仮想化技術を用いた最適なストレージ管理手法では、日立の「Hitachi Dynamic Provisioning(HDP)」と「Oracle Automatic Storage Management (ASM)」を連携させ、日立のエンタープライズ向けストレージ「Hitachi Universal Storage Platform V」のボリューム容量を効率化する。

「HDP」は、複雑なボリューム容量設計をすることなくボリュームを定義でき、仮想ボリュームとしてそれぞれの業務へのProvisioning(割り当て)が可能で、性能設計、チューニングなどの作業を省ける。各仮想ボリュームは、実際にデータを書き込むストレージ実記憶領域(プール)を共有する。これによりストレージ容量の使用効率は最大化され、ストレージシステムの省電力、ランニングコストの改善も可能になる。

「ASM」は、OSがすでに認識しているディスクをオンラインで追加、あるいは削除できる。自動的にデータが再配置されるため、物理ファイルの管理が簡素化され、データ管理者の負担が軽減される。

日本オラクル セールスコンサルティング統括本部 テクノロジーレディネスSC本部長 西島恒氏

検証では、次のような利点が確認できたという。性能設計については、一元管理のプールの設計だけで、ストレージの各リソースの負荷分散が可能になること。そして、データベースの論理的構造とストレージ構造の間の物理構造の仮想化により、ディスク追加に付随する管理作業(OSからの認識、権限変更など)が不要になること。

ボリューム容量仮想化により、あるメーカーの場合、次のような効果があったという。このメーカーでは従来、合計141TBのストレージを約30台の設計開発サーバーのデータ用に33TB割り当てるとともに、20部門の約1,000台に上る従業員用クライアントパソコンによる部門共有データに20TB、個人のパソコンのデータに52TBを仮想的に割り当てていた。しかし実際に使用されていた容量は全体の36%である51TBで、38%にあたる53TBは割り当てられても使用されてもいなかった。一方、まだ割り当てていない容量は26%となる36TBだった。そこで「HDP」を適用、設計、部門共有、個人パソコンのデータに対し、各々100TBの仮想ボリュームを割り当て、仮想容量は合計で300TBとした。これで実際の容量141TBのうち使用容量は51TBだが、容量の割り当てが最適化され、未使用容量は90TB、全体の64%に拡大した。

効率的な災害対策システムの構築と運用管理手法では、日立プラットフォームと「Oracle Database 11g」の主要な新機能「Oracle Active Data Guard」による大規模トランザクション環境での検証が行われた。

今回の検証では、まずオンラインショップを想定、負荷の高いトランザクションのある環境の下で、さまざまな障害を再現した。この検証では、日常的に稼動しているプライマリ・データベースに障害が起きた場合、スタンバイ・データベースでトランザクションが再開、継続的な処理が可能であることが実証できたという。

さらに、スタンバイ・データベースの有効活用も検証された。従来のスタンバイ・データベースでは、プライマリ・データベースからのログが適用されている間は、検索などの作業ができず、ログの適用を一旦停止させなければ検索処理はできなかったため、検索処理を始めれば、未更新のログがたまってしまうことになっていた。しかし「Oracle Active Data Guard」では、ログ適用中であっても検索処理が可能で、常にスタンバイデータベースを活用できるという。

日立製作所 RAIDシステム事業部 製品企画部長の島田朗伸氏は「当社のストレージが稼動している環境では、オラクルのデータベースが多く使われている。実際のシステム環境で、仮想化で本当に効果があることが実証できた。導入のきっかけとして、仮想化技術をどのように活用すればよいか、具体的に説明できるようになったことは大きな成果だ」と話す。

日本オラクル セールスコンサルティング統括本部 テクノロジーレディネスSC本部長の西島恒氏は「企業の情報システムで使われるデータ量が膨大になるなか、システムを止めずに、物理的ディスクを増やすことが可能になった。稼働時間を保証することが容易に実現できる」と述べている。