英国人小説家アーサー・C・クラーク氏が19日、移住先のスリランカで死去した。享年90歳、死因は心肺機能不全。ロバート・A・ハインライン、アイザック・アシモフとともに三大家とされた同氏の死去により、SF小説の1つの時代が終わった。

クラーク氏は、英国サマセット州マインヘッドで1917年に誕生。成人後は英国空軍の将校としてレーダーの開発に従事したのち、ロンドン大学キングス・カレッジで物理学と数学の学位を取得、教員として勤務する傍ら1946年に「太陽系最後の日」でプロ作家としてデビュー。1952年に発表した「幼年期の終わり」でSF作家としての地位を確立、後年「宇宙のランデヴー」と「楽園の泉」の2作品がヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞 (1973年、1979年) 、名声を確かなものとした。1998年には、エリザベス女王よりナイトの称号を授与されている。

作家としての活動以外にも、静止軌道上の衛星間通信に関する論文を科学雑誌「Wireless World」へ寄稿、後年実用化されるなど、科学技術に対する鋭い洞察と見識の高さで知られる。

1960年代後半には、故スタンリー・キューブリック監督とともに映画「2001年宇宙の旅」 (1968年公開) を制作。地球外文明との遭遇と人類の進化をテーマとした本作は、SF映画の記念碑的存在として現在も高く評価されている。

クラーク氏の訃報に接しアメリカ航空宇宙局 (NASA) は、「地球での個人的な旅は終わりを告げたが、彼のビジョンは著作を通じて生き続けるだろう」との声明を発表している。