IDC Japanとノークリサーチはそれぞれ、SaaS(Software as a Service)の市場動向予測を発表した。IDCは2007年のSaaS市場規模を前年比18.6%増の320億円、2007年から2012年にかけてCAGR(年平均成長率)18.2%で成長を続け、2012年には738億円に達すると見ている。ノークリサーチはセットアップ費用、カスタマイズ費用、ランニングコストを含むソフトウェア利用料金をSaaS的市場と見なしており、2007年の市場規模は417億円、2012年には7,746億円に上ると予測する。

IDCによると、SaaS導入における技術的な障壁が低下し、ユーザー企業の心理的な抵抗感も無くなりつつあり、解決すべき課題はあるが準備段階から実用段階へ移行したという。SaaS市場では技術の発展やビジネスモデルの変革など、多様で著しい変化が起きており、パッケージ/ソリューションベンダーや通信事業者の本格参入、ユーザービリティ向上への施策、コミュニティの設立など、市場が急速に拡大する環境が整いつつあるという。同社ITサービス リサーチマネージャーの松本聡氏は「ベンダー間の競合状況が急速に激しさを増している。限られた市場における過剰なベンダー/サービスといった状況に陥る懸念がある」と指摘する。

国内SaaS市場 投資額予測、2007年~2012年(IDC Japan調べ)

一方ノークリサーチは、現在のSaaSにおけるキラーコンテンツ不在を指摘し、パッケージソフトとのハイブリッド運用が主流になると見ている。当面は情報処理量の多いコラボレーション系/フロント系での採用が進むが、パッケージとして優れた機能、実績を保有するソフトウェアが基幹系/コラボレーション系/フロント系にかかわらずSaaS型に移植され、安く簡単に使えるようになることが将来的な理想型だという。SaaS的なテクノロジーベースの仕組みは本流になっていくと予測する一方で、現時点ではITの様々なサービス形態がSaaSおよび広義のサービス形態であるXaaS(X as a Service)にシフトしつつある経過的な状況に過ぎないと見る。ユーザー企業が抱くSaaSのセキュリティ面およびデータの外部保存などに対する不安を解消するためには多くの成功事例が必要と見ており、技術的課題とあわせてSaaSの本格普及には5年程度の期間を要するものと予測している。

国内IT市場におけるSaaS的市場規模推移(ノークリサーチ調べ)