20%成長を続けるCitrix Systems

Citrix SystemsといえばWindowsアプリケーションデリバリソリューションを提供してきたベンダとして有名だが、最近の読者には2007年8月15日(米国時間)にXenSourceを買収した企業としての記憶が新しいだろう。それまではMetaFrameやターミナルサービスといったキーワードを聞くことが多かった同社だが、それ以降はXenの名前とともに聞くことが増えた。

Citrixの業績は右肩上がりだ。ここ数年、売上は20%を越えるペースで増加しつづけている。とくにセキュリティ対応や法令遵守、IT投資コストや運用コストの削減などの流れが同社の業績を後押ししている傾向にある。

シトリックス・システムズ・ジャパン - 日本事業戦略

同社の日本法人がシトリックス・システムズ・ジャパンだ。本社同様、日本においても成長を続けている。2007年にはシトリックス・システムズ・ジャパンR&Dを設立。プロダクトの日本対応を実施する部隊をR&Dで対応するといった棲み分けを実施した。同社の参入している分野は向こう数年の間さらに成長するとみられており、事業も順調に拡大している。

同社では今後の事業戦略として、東京以外の顧客が増えたことから都心以外のユーザサポートの強化、特定の顧客には専属の担当者を配備してサポートおよびサービス体制の強化、研修体制を一新しすべて自社で提供、MSとの提携強化、ISV/IHVとの提供強化などを進めるとしている。

同社のプロダクトとしてはXenServerとXenDesktopが注目される。シェアは高いのはXenServerだが、伸び率が高いのはXenDesktop、という状況だ。XenServerはテストユースにも、また移行時のチェックにも使えるといったように、適用範囲が広い。XenDesktopはそれと比較すると比較的適用範囲が限られる。しかし両プロダクトともに2008年にはさらに伸びることになりそうだ。

「アプリケーションデリバリが弊社のミッション」

シトリックス・システム・ジャパン代表取締役社長 大古俊輔氏

「ユーザとアプリケーションをハードワイヤリングではなくダイナミックにつなぐアプリケーションデリバリが弊社のミッション」「お客さまのGivenな条件の中で最高のアプリケーションを提供する」- シトリックス・システム・ジャパン代表取締役社長 大古俊輔氏は同社の姿勢を説明する。その目的を達成するための仮想化というわけだ。

「これから世界企業になるような中堅企業であってにもITへの投資は厳しいものがある」と同氏は説明する。そうした企業では仮想化技術を使った投資効率のよいITインフラの構築、仮想化されたサービスをベースとしたSaaSやASPの活用がキーポイントになってくるという。

「ビジネスのトップ(CEOやプレジデント、社長)と会話をすると"仮想化"はタブーだ。(彼らは)仮想ではなく火葬を連想するため話が難しい(笑)。"実質的にひとつのシステムとして提供するといった意味の仮想化"のように話を進めなければならない」と自身の経験をおもしろく語る姿もみられた。

XenSourceの買収 - ユーザニーズに答えるために開発する時間が足りなかった

そもそもなぜCitrixがXenSourceを買収したのか、だが、端的にまとめると顧客の要望に応えるにあたって、自社開発を進めていたのでは間に合わなかったからだ。Citrixはこれまでも数社買収しているが、買収の指針は単純だ。必要になるテクノロジをまったくもっていない場合、もうひとつは時間がまったく足りないときに買収する。XenSourceの買収は後者が理由だったとされている。

Citrixはアプリケーションデリバリベンダだ。アプリケーションの仮想化を得意としているわけだが、アプリケーションの仮想化を進めるとバックエンドにリソースが集中してくる。こうなってくるとバックエンドを支えるデータセンターの仮想化が求められるが、バックエンドの仮想機能を開発していては顧客要望に間に合わなかった。そこでXenSourceを買収し、データセンターを仮想化するポートフォリオを整えたというわけだ。

他社の仮想化技術を活用する道もあったのではないかと考えられるが、同社は迅速に顧客の要望に対応するには自社にサーバを仮想化する能力を保持しておく必要があると判断。Citrixはアプリケーションセントリックで事業をすすめているため、他社のプロダクトではCitrixの事業スピードについてこれないかもしれないというわけだ。

Microsoftは22日(米国時間)、Citrixとの提携を強化すると発表。XenSourceを買収したことで仮想化技術を保有する企業として競争に参入したCitrixがだ、従来どおりMicrosoftとの親密な関係を継続していく旨を発表している。