製品ライフサイクル管理(PLM)、コンテンツ管理、エンタープライズパブリッシングの各ソフトウェアソリューションを提供する米PTCは25日、同社の統合3次元CAD/CAM/CAEソフトウェア「Pro/ENGINEER Wildfire」のメジャーリリースとなる「Pro/ENGINEER Wildfire 4.0」の説明会を開催した。同製品は1月より出荷が開始される予定。
最初に登壇したPTCジャパン社長の井上公夫氏は、「PTCは革新的な製品開発を目的としたプロセスの開発を行ってきた。Pro/ENGINEER Wildfire 4.0では、より完成されたソリューションとして、各設計者の効率を向上させる機能はもちろんのこと、企業として、全体のプロセスを革新する機能を盛り込んだ」と製品に対する自信を覗かせ、「2010年の売上目標15億ドルを達成するためには、より広いユーザに製品を使用してもらう必要がある。Pro/ENGINEER Wildfire 4.0はその先駆け」と述べた。
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PTCジャパン社長 井上公夫氏 |
続いて、PTCジャパンのビジネス開発推進室ディレクターの後藤智氏が製品開発の背景となる"設計業務のグローバル化"に関して説明を行った。経済のグローバル化が進展する中、日本企業もアジアの設計開発拠点とともに設計業務を行う機会が増えてきている。特に東アジアでの設計開発拠点が拡大しているという。これは、現地にある生産拠点との連携のしやすさ、市場や顧客に近い場所に置くことで、ニーズに的確に対応することが可能などの理由による。また、開発や設計における現場の不安材料として、製品が複雑化し開発工数が増えても設計者数自体は増えておらず、むしろ負担は増えていること、ならびに開発体制が分散化、多様化しているにも関わらず、設計データのセキュリティ管理が脆弱であることなどをあげ、「市場や顧客を起点とした開かれたものづくりをするためには、グローバルな開発拠点も含めながら、企画・開発・製造・販売における、設計情報の流れを最適化する必要がある」とした。
Pro/ENGINEER Wildfire 4.0に関しては、PTCのSVP Product Management,Desktop Productsのマイケル・キャンベル氏が登壇して説明を行った。同製品は、3次元モデルを視覚的に扱うことにより、単純な設計は簡単な作業で行おうという考えで開発された。3次元モデルを2次元レイアウトと連動させるといったことも可能。「Foundation XE」「Advanced SE」「Advanced XE」「Enterprise SE」「Enterprise XE」の5種類がラインナップされている。なお、次世代バージョンとなるPro/ENGINEER Wildfire 5.0では"詳細設計"と"配管・配線機能"が強化される予定だという。
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PTC SVP Product Management,Desktop Products マイケル・キャンベル氏 |
具体的な新機能として、複雑な形状に対して自動的にラウンド(角を丸める)処理を行う「Auto Round」が追加されたことが特徴となっている。同機能は、熟練者でも数十分かかるモデル上にラウンドフィーチャーを作成する作業を数十秒で行うため、時間の節約が可能だ。また、複雑な形状の場合、手作業では見落としなどが起きるが、同機能を用いれば、すべてのモデルもしくは任意の選択部分に対し自動でラウンドを生成することが可能なため、そうしたエラーをなくすこともできる。
モジュールとしては「Rights Management Extension(デジタル権利管理)」「Tolerance Analysis Extension(公差解析)」「ECAD-MCAD Collaboration Extension(ECAD-MCADコラボレーション解析)」などが追加されている。
Rights Management Extensionは、米Adobeの「Adobe Livecycle Rights Management ES」を用いて部品やアセンブリ、図面のIPを保護するもの。電子作業物へのアクセス、コピー、利用を制限するツールだ。これにより、不正ユーザのIPへのアクセス、修正、コピーを防ぐことができるようになる。
Tolerance Analysis Extensionは、CETOL技術を用いることで設計の段階から公差を求めることを可能にするもの。ユーザがコンポーネント、寸法、幾何公差、アノテーションなどを選択することで公差ループを作成、解析結果は最大、最小、2乗和根公差などを選択することが可能だ。
ECAD-MCAD Collaboration Extensionは、プリント基板設計のMCADとECADのバージョン間の差分変更を自動的に認識するもの。MCADとECADのビュー間のアソシエティブ・インタフェースを実現することで問題を解決、エレメカ詳細設計プロセスの改善が可能となっている。
なお、同社では夏ごろをめどにPro/ENGINEER Wildfire 4.0用の新モジュール「Integrated Digital Human Modeling(統合デジタル人体モデリング)」の提供を予定している。同モジュールは、Pro/ENGINEERの各シートに人種や性別を分けた単一グループを代表する人体模型を用意。複数グループを代表する人体模型と比較することでリーチやビジョンを分析するほか、持ち上げや押す、引くなどの動作の動的分析を行うことができる。